列車の中でも5G利用でインターネットが快適に?

2011年に東京メトロが一部の区間で通信ができるよう整備してから、2013年には都営地下鉄の全線でインターネット通信ができるようになるなど、列車内での通信環境はここ数年で変化しつつあります。しかしながら、今現在も時間帯や場所によっては公衆Wi-Fiがつながりにくい、車内や構内でも圏外になってしまうという声もゼロではありません。
そんな中、昨今のニュースでは5Gの普及が様々なところで取り上げられています。5G通信を利用すれば、列車内や地下鉄のホームでもネットがつながらない場所がなくなるのでは?という期待が生まれてきますが、実際その可能性はあるのでしょうか?
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列車の中で電波が悪くなる理由
そもそも列車内で電波が悪くなるのは、屋外を走行中の電車は様々な方向から電波を受けながら走っており、車外の状況も刻一刻と変化しますので、安定した電波が届かなくなるためです。
それは走行中のみならず、駅停車中にも同様の状況になる場合があります。
携帯の電波だけでなく、Wi-Fiも同様に乗車場所や時間帯によっては全くインターネットにつながらないという場合もあります。その理由は、混雑時は特に多くの利用者が同時にインターネットに接続してしまうと、それに伴ってトラフィックも混雑してしまい、遅延が生じてしまう為です。
車内の密集した環境で皆が同時にネット接続をしようとすると、Wi-Fiがパニックになってしまうと考えれば分かりやすいかと思います。
時間帯や利用状況によるネット回線の混雑は4G回線も同様のことが言えます。
NTTドコモとJR東海が行った実験
NTTドコモとJR東海は、2019年8月24日から9月7日に、東海道新幹線車内におけるモバイル通信の快適化を実現させるため、高速走行中の列車と5G無線通信を行う実験をしました。
これまで、高速走行する列車において5G通信を可能にするには基地局の配置と、移動端末への電波の追従、周囲の遮蔽物の影響などを技術的に検証すべき点が多くありました。また、5G向けに広帯域を確保できる28ギガHz帯は、4G回線よりも伝達できるデータも増加し、4Gの2倍以上もの帯域幅が使用できます。しかし、この28ギガHz帯は、直進性が高く減衰が大きいというデメリットもあります。
これに対して、同実験では、基地局と端末との間で超高速の通信状態を確立するビームフォーミングや、端末の移動に合わせてビームフォーミングの方角を変えるビーム追従、さらに、端末が隣の基地局のカバー範囲へ移動した際に通信を途切れさせずに基地局を切り替えるハンドオーバーの各技術を盛り込みました。そうすることで、高速走行する新幹線と、5Gの通信実験に成功したのです。
また、高速走行する新幹線の車内において5Gのデータ通信を12秒間確立し、その最大通信速度は1Gbpsを超えました。さらに車内に設置した4Kカメラの映像を端末から基地局へライブ中継する伝送実験と、8K映像を基地局から端末へダウンロード配信する伝送実験にも成功したことから、新幹線だけでなく、一般車両への5G通信も期待されます。
新幹線の走行スピードは約200km/h以上といいます。一方で、地下鉄などの一般的な列車は60から80km/h、速いものでも100km/hのスピードです。走行中に様々な方向から電波を受けている列車にとって、高速走行する新幹線と5Gの通信成功は今後の一般列車への5G通信導入もさらなる期待が寄せられると言えます。
5Gで電車内も圏外撲滅へ
車内への5G導入の可能性について
上記の実験が成功したことによって、5Gの普及に伴い列車内でも5Gの導入の可能性は大いにあります。また、今現在一部で利用されている公衆Wi-Fiも、5Gを中継回線として活用することで、大幅に速度の改善を行うことができる可能性もあるのです。
特に、4Gよりも広範囲の帯域をカバーすることのできる5Gは、これまで電波の届かなかった場所でもつながりやすくなるという期待もできます。
駅構内においての5G活用方法
5Gは同時に多数のデバイスを接続しても安定した通信速度を保つことができます。特に通勤通学の時間帯は車内だけでなく駅構内も混雑が予想されますが、そこにも5Gを導入することで、掲示板から時刻表、ゴミ箱まで様々なモノをインターネットに接続しても、通信速度が落ちる心配はありません。
また、今現在アプリ上で駅構内のトイレの空き状況が確認できるサービスが開始されていることから、今後は『次の電車のほうが空いていますよ』などの車両のリアルタイム状況を配信するサービスが出てくることも予想されます。
現在は4G回線やWi-Fiを利用して通信を行うことがほとんどのため、そのようなアプリを利用しても『〇分前の状況』などが表示されると思うのですが、今後は5Gによってリアルタイムの情報を提供することが可能になっていきます。車内車外問わず5G通信が行えるようになることで利用者の利便性も更に向上すると言えます。
まとめ
これまで、列車内に電波が届かないのは仕方のないことだとあきらめていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。5Gの普及によって、もはやインターネットに接続できない場所はなくなると言っても過言ではない状況まで通信技術は進んでいます。
駅や列車内に特化したネット上の便利サービスやアプリも今後増えていくことでしょう。