5Gではなぜ、4Gよりも高い周波数が必要なのか

5Gチョイスではこれまでにも5Gについて様々な角度からレポートしてきました。しかし、5Gは結局どうして4Gよりもはるかに速い速度の通信ができるようになるのか、4Gよりも高い周波数を使わなければならないのか具体的には理解していないという方も多いはずです。

尤も、5Gの基地局構築においては5Gの電波の性質上、遠くに電波を飛ばすことができないことから、多くの基地局を設置しなければならないため、3月にサービスはスタートしたものの、いまだ5Gを利用できるエリアは限られています。高い周波数を使うことがなければもっと早く利用できるのではと思う方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、5Gではなぜ4Gよりも高い周波数が必要なのかという点について解説していまいります。

5Gで利用する2つの周波数について

4G LTE世代までのネットワークでは、主に500〜2500MHzの周波数帯が活用されていました。

一方、5Gで定義されている周波数帯『5G NR(New Redio)』は主に2種類に分かれます。1つは400〜6000MHz帯の、『サブ6(Sub6)』、もう1つは24〜50GHz帯の『ミリ波』です。

サブ6とは

サブ6とは、『sub-6』とも書かれ、『さぶろく』や『サブシックス』などと呼ばれるものです。サブ6はこれまでもLTEやLTE-Advanced、無線LANなどで使用されるなど近年非常によく使われている周波数の一つです。ですので、無線特性などネットワーク構築における技術的な課題については比較的解決済みなものも多く、これまでに使用されてきた技術を流用できるメリットがあります。

そのため、今年3月に利用が開始された5Gサービスはまず、2種類の周波数帯のうちサブ6が先に本格利用が進んでいるところです。ただし、サブ6GHz帯のデメリットとしては、既にLTEや無線LANでも使われているため、まとまって広い周波数帯域を確保しにくいことや速度向上が見込めないことなどがあげれられます

ミリ波とは

一方ミリ波とは5Gに利用される周波数帯の中でも、従来のモバイルブロードバンドに使われている周波数帯よりも超高周波に属しているものを指します。電波の分類でいうと、『ミリ波(EHF)』に属しています。

サブ6に比べてミリ波の周波数帯域は約4倍と広く、5Gが本当に高速通信を実現できるようになるには、このミリ波の恩恵を受けてこそであるといわれています。もちろんサブ6でも4Gと比べて非常に速い速度での通信はできるのですが、ミリ波に比べると少々速度は劣っている部分があるといえるでしょう。特にミリ波の周波数帯域は電波天文学ぐらいでしか利用されていないので、大容量化や高速化への対応もサブ6に比べて容易です。

5Gの高速化には今まで使われていなかった帯域が必要

そんなに早くなるのであれば4Gの時に高い周波数を使っていればよかったのではと思う方もいらっしゃるかもしれません。ではなぜ4Gまでは高い周波数帯が使われてこなかったのかというと、高い周波数帯域のものは遠くに飛びにくい為です。電波は周波数が低いほど障害物の裏に回り込みやすい特性があるため遠くに飛びやすい一方、周波数が高いと回り込みにくく直進性が強いことから、障害物に電波が遮られやすく、その分遠くに飛びにくくなる訳です。

であれば5Gでは4Gよりもはるかに高い周波数帯域を利用することにしたのでしょうか。

5Gの高速化の実現には高い周波数帯域が必須

5Gの高速化を実現するには、これまで使われてこなかった高い周波数帯域が必須です。5Gでは最大で20Gbpsという通信速度を実現することが特徴の1つとなっていますが、実は5Gの通信方式「5G NR」の基本的な技術は4Gと大きく変わっている訳ではなく、劇的な技術革新によって高速化を実現している訳でもありません。

では、どうやって高速化を実現するのかというと、電波の帯域幅、要するにデータが通る道幅を広くすることで、一度に通信できるデータの量を増やしているのです。ですので、5Gもいずれ、トラフィックが限界になってきたら、次の段階へと進んでいく必要があるということになるでしょう。

周波数帯が高い電波は遠くに飛びにくい

ただし、前述にも申し上げた通りに、周波数帯が高い電波は遠くに飛びにくいという性質を持ちます。ですので、5Gを全国くまなくカバーするには多くの基地局の設置が必要になるため、現状では5Gを利用できるエリアが限られているのです。

要は、電波の届かない場所を作らないように、電波と電波を結ぶように基地局を配置していかなければならなりません。とくにミリ波帯は大容量ではありますが、エリア拡大に課題があるといえるでしょう。

5Gで低遅延はどう実現するのか

ここまでの解説で、5Gは4Gよりも高速な通信を実現するために高い周波数帯域が必要であるということが分かったと思います。

ただ、5Gの特徴は高速通信だけではありません。これまでリアルタイムで配信される動画などを見ていたご経験のある方はわかるかもしれませんが、4GやLTEではリアルタイムとの誤差があったかと思います。しかし5Gではリアルタイムとの誤差がほぼゼロになるとアナウンスされており、これは日本とアメリカ等はなれた場所を繋いだ場合も同様です。

このように、リアルタイムとの誤差がほぼなくなることを『低遅延』と呼ぶわけですが、この『低遅延』もまた5Gの大きな特徴のうちの一つです。

5Gの高速通信は周波数を高くすることで実現ができるわけですが、低遅延はなぜ実現することができるのでしょう。

それは、『モバイルエッジコンピューティング』という技術を用いるからです。モバイルエッジコンピューティングとは、

  • 処理の超低遅延化
    端末に近いエッジサーバが処理を実行、クラウドコンピューティングが真似できない域まで超低遅延化
  • 超大量データの解析
    エッジサーバが分析用データの一次処理を実行、カスタムネットワークだけではなく全体のトラフィックを大きく低減しネットワークリソースを有効に活用、超大量データの分析を可能に
  • センシング能力の拡張
    エッジサーバを介して端末間で情報を共有、センシング能力を補完・拡大
  • 端末負荷のオフロード
    エッジサーバに処理負荷の高い機能を集約、端末性能に左右されないアプリケーション性能の提供と端末の低消費電力化が可能

などの特徴があります。

ネットワークが遅延してしまう理由は大きく分けて2つあり、1つは通信をする端末と処理をするクラウドとのネットワークの距離によって発生するもの、2つ目はくらうどの処理に時間がかかることで発生するものです。

上記2つの負担を軽減するためにエッジコンピューティングを利用することで、クラウドでこなす処理の一部を負担し、クラウドに係る処理負担を減らしながら通信をする距離も縮めて遅延を小さくすることが可能になるということです。

まとめ

本記事では、5Gで利用する周波数帯域と、なぜ5Gの実現では高い周波数帯域が必要なのかという点について解説いたしました。

なかなか5Gが利用できるエリアが広がらずにどうしてだろうと感じている方もいらっしゃったでしょう。しかし、5Gの高速通信を実現するには多くの基地局の設置が必要であり、現時点で今すぐに広げるということが難しいのです。

とはいえ、5Gスマホはすでに発売されている状況でありますから、1日でも早いエリアの拡大を期待したいところです。