5Gが可能にする0距離の雪害対策

2020年1月、福井県の永平寺町内で次世代通信規格「5G」を雪害対策に活用する実証実験が行われました。雪害対策に5Gを活かそうとする試みは県内初であり、実験内容に注目が集まりました。日本は自然災害が多い国であり、豪雪地帯に指定されている地域も多く、雪害は深刻な問題です。

5Gを雪害対策に用いるには、コストなどの問題から、実用化には課題が多いとされています。それでも同時多接続・低遅延といった特性を活かした効率的な雪害対策について、期待が高まっています。他にも5Gの特徴として、大容量データを超高速で送受信できるというメリットもあります。そのため通信による時間のズレが少ないので、安全と迅速さが要求される除雪作業を行う上で大いに役立てられるでしょう。

永平寺町では、総務省が2018年度に企画した5G利活用アイデアコンテストにおいても、地域課題解決賞に選ばれています。今回は5Gが可能にする雪害対策を紹介していきたいと思います。

日本の雪害について

日本では、国土の半分以上が豪雪地帯に指定されており、約2000万人もの人々が豪雪地帯で生活を営んでいます。雪害の代表的なものとしては、雪崩、除雪中の転落事故などの豪雪地帯特有の災害のほか、路面凍結などによる交通事故や歩行中の転倒事故など、豪雪地帯以外でも発生する災害もあります。

近年では記録的な大雪も発生しており、福井県永平寺町でも2018年2月には大雪に見舞われました。この大雪で交通網が麻痺してしまい、さらに現場の職員と対策本部とのやりとりは電話がメインだったので、状況を把握し切れなかったとされています。

行政コス・福井豪雪における除排雪の経費

福井県が発表した除排雪経費は、153億7000万円(県:41億円、17市町:112億7千万円)であるとされています。溶けてなくなる雪の処理に、153億円の行政コストも発生したのは何故でしょうか。大雪では主に以下のような被害が発生してしまうので、速やかな除雪が求められます。

・降雪により家屋が閉ざされ、住人が孤立

・農業用ハウスの倒壊、農作物被害

・スリップや衝突などによる交通事故の増加

・除雪作業中の事故による死傷者の発生

特に大雪による死亡者は除雪作業中の事故も多く、また作業員の過労も問題視されています。実際の福井県の被害状況は、以下のように発表されています。

死亡 12人
重軽傷 113人
建物被害 123棟
農業ハウス被害 900棟超(被害額11億円)
農作物被害等 2億2000万円
ガードレール等破損 2億1000万円
教育施設関係 2600万円
民間企業関係 5億3000万円
合計 20億9000万円

こうした事情から福井県と17の市町では国への支援要請も出され、2018年2月9日には、永平寺町にも災害救助法が適用されました。この他にも2016年の西日本豪雪、2012年の東北豪雪、2011年の北海道豪雪など、記録に残る雪害が近年では発生しています。豪雪地帯が多い日本では、効率的な雪害対策を今後どのように取っていくかが喫緊の課題として注目されています。

雪害対策に利用できる5Gとは

福井県永平寺町で実際に行われた雪害対策実証実験では、どのような実験が行われたのでしょうか。その内容と効果について、見ていきましょう。

 

5Gを利用した雪害対策実証実験について

2020年1月30日、福井県永平寺町は町内において5Gの通信環境を整え、除雪を効率化する実証実験を行いました。総務省では2019年度、全国23ヶ所で5Gの実証実験を行っていますが、北陸では福井県永平寺町の実証実験が唯一となっています。

実験では近くの駐車場に配置した巡回車と除雪車に、周囲360度を撮影できる4Kカメラを搭載。現場で撮影された高精度の映像が対策本部拠点に見立てた会場に伝送され、積雪状況や除雪の進み具合が確認できるようにされました。

暖冬の影響もあり当日に雪はありませんでしたが、担当者がVRゴーグルを用いて周囲360度の映像を確認。運転手に除雪場所や手順の指示を出すなどといった形で活用されました。人材不足が指摘されている除雪車の操縦者への遠隔指導として活用できる見通しとなっています。巡回車および除雪車は、GPSデータと4Kデータを地図上に表示。住民が除雪状況を把握できる技術も実証されました。

永平寺町では2018年の大雪において、1日に約700件もの問い合わせがあったとされます。しかし5G技術を利用すれば、除雪の状況が一目で分かるようになります。雪害以外の災害時にも対応や職員の働き方など、あらゆる方面で効率化に繋がるでしょう。

5Gの活用で雪害対策の未来はこうなる

福井県永平寺町で行われた実証実験に触れましたが、実際に5G技術が導入されると、雪害対策の未来はどう変わるのでしょうか。永平寺町では5Gを活用した雪害対策イメージとして、以下のような事柄を挙げています。

・現場から届く映像を基に、センサーを利用して降雪量を計測・判別する。

・AI技術を用いて積雪量の見える化を行い、除雪ルートを自動設定する。

・ダイレクトマッピングシステムとGPSにより、運転支援が行われる。

・5Gの低遅延性能により、遠隔操縦による除雪車の自動運転が可能になる。

※これが実用化されれば、作業に不慣れな職員でも除雪車を運転できるようになるでしょう。

・ドローン自動運転による地区一斉の屋根雪下ろしが実現可能になる。

・故障車やインフラの破損を除雪車のカメラで検知して、警察や行政に自動通知することが可能になる。

・AI対応と情報の見える化により、問い合わせ対応の省力化も実現できる。

・作業員の過労の防止・適切労務管理も実現できる。

これらが実現されれば、雪害対策を取り巻く状況は劇的に改善されるでしょう。クラウドサーバーと膨大なセンサーとの通信の間には、5Gの同時多接続性が必須となります。同時多接続・低遅延・高速・大容量といった特性を持つ5Gだからこそ実現できるヴィジョンですね。

まとめ

日本は地震や大雨などの自然災害が多い国である上に、近年では大きな雪害も発生しています。いずれ溶けてしまう雪であっても、一度に大量に積もれば建物の倒壊や交通事故に繋がりかねません。雪害がもたらす被害は甚大であり、安全かつ速やかな対策が求められています。雪害対策にはさまざまな課題が提示されていますが、5G技術の活用により大きく改善されていくでしょう。

永平寺町の河合永充町長は、「実証実験が地方の課題解決に向けた一歩になれば」と話しました。5G技術を活用した災害対策は、長期的には雪害以外にも適用されていくと予測されます。コスト面などの課題もありますが、今回の実証実験の結果を見るに、5Gは雪害対策に有効であると言えます。今後も5G技術を活用した災害対策がどう進化していくのか、関心が高まっていくでしょう。