ローカル5Gを活用したスマートファクトリーの実現

近年急速に進むデジタル化の影響や、激しく変化し続ける顧客ニーズにより、工場をはじめ製造業は常にそれらの流れに合わせた変化が求められています。

そうした中、最近ではローカル5Gを活用してスマートファクトリー化を実現する動きが広まってきているのです。ローカル5Gはキャリアの5Gと同様の特徴を持ちながら、Wi-Fiと同じようにプライベートなインターネット環境を構築できるもので、工場などでは特に活用が期待されています。

本記事ではローカル5Gを利用したスマートファクトリー化の実証実験の例から、スマートファクトリーの実現におけるローカル5Gの活躍の場について言及していきたいと思います。

スマートファクトリーとは

ローカル5Gの活用について詳しい解説をする前に、まずスマートファクトリーとは何なのかというところから解説していきましょう。

スマートファクトリーとは一般的に、デジタルデータの活用により業務プロセスの改革、品質・生産性向上を継続発展的に実現される向上定義されています。ドイツ政府が提唱した国家プロジェクトの『インダストリー4.0 』を体現し、AiやIoTなど最先端技術を取り入れた向上のことを指します。

要は、先端的な技術を取り入れたことで、生産性向上等を目指した工場のことを『スマートファクトリー』と呼ぶとお考え下さい。その、先端技術のうちの一つが今回ご紹介する『ローカル5G』であるということです。

ローカル5Gを利用したスマートファクトリー化実証実験

実際、川崎重工業と、ベニックソリューション、オプテージの三社は2020年9月3日に、ローカル5Gを活用したスマートファクトリー実現への実証実験を実施すると発表しました。

実証実験の実施期間

同社らは今年8月にローカル5Gの実証実験を川崎重工播磨工場で実施するための予備免許を取得し、実験試験局の同免許取得の準備を進めています。

なお、2020年10月からスマートファクトリーの実現に向けた実証実験を開始する予定です。

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遠隔ロボットシステムにローカル5Gを活用し検証

今回の実証実験で3社は、ローカル5Gの活用におけるノウハウや利用技術の獲得をしながら、現在川崎重工播磨工場で運用している遠隔操縦ロボットシステム『Successor-G』における無線伝送の操作性などの検証を行う予定です。ちなみに、『Successor-G』は、遠隔操縦で熟練作業者の動きを再現する、研削、バリ取り、表面仕上げ用のロボットシステムです。ここにローカル5Gを活用することで、より正確な操作を遠隔地からでも行うことができるようになることから、働き方改革へもつなげていく方針でしょう。

スマートファクトリー化におけるローカル5Gの活躍

実証実験は10月に開始されますので、それ以降に実証実験の結果が出るわけですが、その結果次第では今後様々な企業にローカル5Gが導入されていくことも予想されます。

デジタル化はむしろ今後どの企業も生き残っていくためには非常に重要な最優先事項ともいわれているほどです。ここからは、スマートファクトリに―の実現における5G活躍の場について解説していきましょう。

IoT製品のさらなる向上を助ける

そもそも5GはIoT製品の進化をさらに加速させるとも言われており、工場内で利用されるIoT製品の機能性をさらに充実させることにつながるでしょう。

例えば先ほどもロボットシステム『Successor-G』でローカル5Gを活用するというのがありましたが、ロボットもIoT製品の一つです。こうしたロボットなどに5Gを活用することで遠隔操作を可能にしたり、操作の正確性、利便性を向上させたりすることにもつながります。

Ai導入を助ける

近年様々な企業でAiなどの最先端技術の導入を推進されておりますが、そもそもAiなどの最先端技術は安定した通信環境下でないと十分に力を発揮できない可能性もあります。

ローカル5Gを導入することでAiの導入をしやすくすることができるというのも、スマートファクトリー化を進める手助けにつながりますので、一つメリットであるといえるでしょう。

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深刻な人材不足の解決

工場などの製造業だけではありませんが、近年日本の中小企業の約7割は人材不足に苦しめられているといいます。そういった意味でもデジタルを導入して、システムに任せられるところは任せようというのが急務であるといわれているわけですが、ローカル5Gを導入することでAiやロボットの活用がさらにしやすくなり、人に代わって作業ができるシステムも増えてくることから、深刻な人材不足を解決へアプローチしてくれます。

働き方改革の実現ができる

また、最近では新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、テレワークや在宅ワーク等が導入され、リモート会議なども実現したことから働き方改革が本格的に促進され始めました。

尤も、これまでは会社に出勤して業務にあたる、営業は対面でというのが通常であったものの、新しい生活様式の推進もあり、インターネットを通した業務がニューノーマルとなってきているのです。

工場の業務も自宅からローカル5Gなどのインターネット回線を利用してロボットの操縦ができたり、操縦がきちんとできているかの確認などができるようになったりすることで、工場の『在宅ワーク化』が実現し、働き方改革を導入することができるようになるでしょう。

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まとめ

ローカル5Gは基本的に、工場やショッピングモール、ドーム等大型施設が多く免許の申請をしているようです。

実際、自社の機密情報などが漏洩するリスクなども軽減されることから、これまでも多くの施設がローカルネットワークを利用してきました。ローカル5Gはローカルネットワークでありながら、かつ5Gと同様の高速、大容量の通信ができるようになるので、スマートファクトリーの実現においては欠かせない最先端技術となるでしょう。

スマートファクトリー化と一口に言いますが、工場に限らず近年ではいろいろなところでデジタルの導入が急務だと言われており、今後デジタルを導入しない企業については周りから淘汰される時代になるともいわれています。要は工場の場合はスマートファクトリー化しないと生き残ることができない可能性があるということです。

先陣を切ったのは川崎重工業ら3社でした。この3社は実証実験の結果をもとに今後スマートファクトリー化を進めていくことになるのではないでしょうか。