渋谷の『5Gエンタメ』の事例から見た、今後のエンターテイメントの可能性

日本における5Gサービス指導に伴い、5Gの新たな可能性が注目されています。職場、医療、教育などの現場でより便利に活用できると想定されています。さらにエンターテイメント業界でも5G技術を活用することにより、これまでになかったエンタメ体験が期待されています。
たとえば渋谷では、au 5Gと渋谷による、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」が開催されたのをご存知でしょうか。現実とバーチャルを繋ぎ合わせることで、バーチャル空間上に「もう1つの渋谷」を作り、新たな文化を生み出そうとするなどユニークな試みがなされました。また株式会社ソニーにおいても来るべき5G時代を想定した、さまざまな映像制作の試みがなされています。
今回は渋谷の成功事例を中心に、5Gを活用した今後のエンタメの可能性について見ていきましょう。
Contents
渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトとは
「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は2020年1月24日に始動しました。KDDI株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン、一般社団法人渋谷区観光協会が5Gを活用し、渋谷区が推進する創造文化都市事業への貢献を目的としたプロジェクトです。賛同したランドオーナーやテクノロジー企業など、以下のような合計32社が参画しています。
・東急
・パルコ
・ベイクルーズ など
「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」では、5Gと融合することでエンタメを中心としたさまざまな文化の向上を目指しています。実際にどのような試みが行われたのか、さっそく見ていきましょう。
ハチ公前に5Gアンテナが
2020年3月より5Gの提供が予定されています。それに先駆けKDDIは、1月24日・25日の二日間限定で渋谷駅のハチ公前に5G可搬型基地局を設置しました。さらに広場ではライゾマティクス・アーキテクチャのディレクター監修もと、「1964 TOKYO VR、Psychic VR Lab」と連携して5Gを活用したXR体験ブースも開設されました。広場内の観光案内所「青ガエル」においては、は1月24日~3月31日までの間、以下のような体験ができるようになっています。
・AI店員の接客
・渋谷でのau 5Gの取り組み案内
・拡張体験施策のガイド など
ちなみに、渋谷をはじめ東京都のKDDIにおける5Gエリア展開については下記の記事に詳細を解説しておりますのでご覧ください。
渋谷の街がバーチャルに
「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」では、最新技術を用いたデジタルトランスフォーメーションの実証実験も行われました。専用アプリ搭載のスマホでQRコードを読み込むと、1964年の渋谷の映像が現在の街並みに重ねて映し出されるというユニークなサービスが登場。画像内のバーを動かせば現在と1964年の渋谷の違いが体感できるようになります。このようにAIやXRを活用して、未来の観光案内を随時実証していく予定とされています。
1月25日にはライブイベントと参画企業の丸井、Psychic VR Labが連携して、新しいライブ拡張体験が提供されました。これによりライブの一部中継や、ライブ会場のステージ演出にリアルタイムで参加することが可能となりました。
さらに1月26日(日)には格闘ゲームの祭典「Evolution Championship Series : Japan 2020(EVO Japan 2020)」の決勝戦が楽しめるe-SPORTSライブ中継イベントも実施。渋谷の街を活用した、さまざまなバーチャル体験が提供されました。
5Gを活用した今後のエンターテイメント
5Gの登場と活用により、エンタメ業界では今までにないコンテンツが創造できるようになると期待されています。具体的にはどのようなことができるのか、一つずつ見ていきましょう。
5Gを活用した新しい映像体験
5Gは超高速・超低遅延・多数同時接続という特性を有しています。ここにIoT技術を組み合わせることで、エンターテインメントの世界は飛躍的に進化するでしょう。中でも5Gで進化が期待されるエンターテインメントの領域は、「映像」であるとされています。
たとえばソニー株式会社が注力する事業領域の一つに、5G/IoT事業があります。ソニーが有する高度なコンテンツ制作力、グループシナジーによって、これまでにない映像体験を提供しようとしています。作り手がイメージした世界観や質感を忠実に再現することで、見る側はよりリアルで臨場感のある映像体験を楽しめるようになるでしょう。
5Gを活用した新たな映像体験を楽しむには、インターフェースとなるモバイルデバイスが必須となります。ソニーでは5G時代を見据えた新機能の提供開始も予定されています。表示領域を広げた有機ELディスプレイにより、アプリやゲームでもこれまでにない没入感・臨場感が期待されています。
5Gがコンサートやスポーツ観戦の常識を変える
新たな映像体験の可能性として、ライブやスポーツ観戦の常識が覆ることも期待されています。たとえば宇多田ヒカルのコンサートステージでは、VRコンテンツが活用された事例があるのをご存知でしょうか。複数のカメラ、VRモニタリングシステムを駆使して映像を撮影。その映像をマルチビューイング化してステージ全体の俯瞰と、アーティストの地下さを切り替えられるようになりました。これにより視聴者がアーティストと目線を合わせることも可能となり、場合によっては現実以上の臨場感すら体験できるようになるでしょう。
スポーツ観戦でも、5Gでは「モバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)」という技術を駆使して大容量データでも遅延なく配信することが可能になっています。サッカースタジアムで試合を観戦している時、ピッチにデバイスを向けるとARで選手や試合状況など、さまざまな情報を表示することも可能となります。
従来カメラは有線での映像配信が必須でした。しかし5G時代の到来により、有線の映像配信が必ずしも必要なくなるので、クルーの機動力も上がるでしょう。映像制作・配信のワークフロー改善も期待されています。
5Gとデジタルツインの活用
「デジタルツインとは」、IoTで収集したデータを元にサイバー空間内に物理空間の環境を再現する技術です。デジタルツインは現時点では、主に製造現場のシミュレーションなどに用いられています。しかしエンタメ領域への活用可能性が期待されているのをご存知でしょうか。
現在、5Gとデジタルツインの活用による新たな表現技法の開発が進められています。たとえばソニー・ピクチャーズ エンターテイメントの「ソニー・イノベーションスタジオ」では、デジタルツインのアプローチを取り入れて以下のような映画撮影が行われています。
①拝啓のスタジオセットを360度のフルスキャンで撮影する
②登場人物はグリーンバックで撮影する
③これらを合成する
これにより離れた場所にあるものを組み合わせた撮影が可能になる上に、リアルタイム配信も行えるようになります。さらに背景はCGキャラクターなどと組み合わせることも可能です。後加工で昼を夜に変更したり、光源の位置を変えたりできるので撮影の幅が広がりますね。スタジオセットや建造物をあらかじめ撮影しておき、アーカイブ化することで制作フローも大きく効率化されるでしょう。
まとめ
今回は「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」の成功を事例に、来るべき5G時代のエンタメの可能性を紹介しました。
5Gサービスは私たちの生活をより便利に、より豊かにしてくれるとされています。5Gを活用した映像コンテンツは、現実に近い臨場感と没入感が味わえます。さらに見たいアングルを切り替えたり、情報をリアルタイムにAR空間上に表示したりといった新しい映像体験も可能となるでしょう。
いよいよ日本国内でも5Gサービスの提供が開始されます。今後も5Gを取り巻く動きからは目が離せませんね。