カネカが5G対応のスマホ向けフィルムを開発!ポリイミドフィルム「ピクシオIB」とは?

第5世代移動通信システムである「5G」。2020年から日本でも5Gサービスが開始されました。一般的に5Gは、4Gの約100倍もの通信速度と言われています。国内外でも5G対応スマートフォンが登場し、今後のスマホ市場は5G対応機種が拡大していくと見なされています。

ただし通信の利便性を向上させると期待される5Gですが、伝送損失の問題も懸念されています。そこで登場したのが、株式会社カネカによる5G対応の超耐熱ポリイミドフィルムです。

同社は2019年にはSub6帯に対応可能な「ピクシオSR」を発表し、さらに今回はミリ波帯対応の「ピクシオIB」を発表しました。超耐熱ポリイミドフィルムのラインナップを拡充し、スマホやデジタルデバイスの高機能化を支える素材として提供されます。

今回はカネカが発表した超耐熱ポリイミドフィルムについて、詳しい内容を見ていきましょう。 

 

5G対応の超耐熱ポリイミドフィルムをカネカが開発

株式会社カネカは、化成品・機能性樹脂・発泡樹脂製品・ライフサイエンス・エレクトロニクスなど、さまざまな事業を営む日本の化学メーカーです。

 

2020年11月18日、カネカは次世代通信規格・5Gに対応するスマホの電子基板用フィルムを開発したと発表しました。同発表によると、樹脂の設計などを工夫して、電気信号の損失を従来の半分以下に抑えたとされています。

 

カネカは高速情報通信を支える素材として、超耐熱ポリイミドフィルム「ピクシオ」で高いシェアを有しています。さらに今後は、以下のようなさまざまなソリューションも提供する方向性が示されています。

・ガラス代替フレキシブルディスプレイ用透明ポリイミドフィルム

・有機ELディスプレイTFT基板向けポリイミドワニス

・超高熱伝導グラファイトシートなど各種ポリイミド製品

など

今回カネカが発表した、最新の超耐熱ポリイミドフィルム「ピクシオIB」について、見ていきましょう。 

ポリイミドフィルム「ピクシオIB」

11月18日にカネカが発表したポリイミドフィルム「ピクシオIB」。「ポリイミド」とは、イミド結合を含む高分子を総じて呼ぶ名称です。 極めて強固な分子構造で、数ある高分子の中でも高い性能を発揮します。

ポリイミドフィルムは耐熱性に優れ、スマホなどのフレキシブルプリント基板に使用されます。カネカの「ピクシオ」は、コアとなるポリイミドフィルムの両面に熱可塑性ポリイミドの接着層を施すことで、優れた加工性を持つ超耐熱ポリイミドフィルムです。主に2層フレキシブルプリント回路基板に使用されます。

カネカはこれまでも、データ通信量が多くなる5G向けに、通信ロスを最小限に抑えるフィルムの研究・開発を進めてきました。

今回の「ピクシオIB」は、カネカが長年蓄積した高度なポリイミド開発技術を活用されています。高周波帯の誘電正接を、世界最高レベルの0.0025まで低減に成功。より通信速度が早い28ギガヘルツ以上の「ミリ波帯」にも対応可能にしました。

※ミリ波とは?

5G通信で利用できる新しい周波数帯です。5G用の電波には、「sub6帯(3.6GHz~6GHz)」と「ミリ波帯(28GHz~300GHz)」の周波数帯に分かれています。今後の5G通信環境では、高周波数で通信速度が速いミリ波帯の普及が進むと予想されています。

ポリイミドフィルム「ピクシオSR」

カネカは2019年にも、5G向けの超耐熱ポリイミドフィルム「ピクシオSR」を発表しています。こちらは6ギガヘルツ以下の周波帯を使った5G通信に使える製品となっています。

 

「ピクシオSR」は、独自のポリイミド分子設計技術によって、5Gの高周波帯に対応します。低伝送損失を実現するとともに、銅箔との接着面に熱可塑性ポリイミド層を用いることで、優れた加工性を持っています。デジタルデバイスの高機能化を支える製品として、既に提供・採用されています。

 

5G対応フィルムの本格発売は2021年からスタート

Apple社のiPhoneシリーズからも5G対応機種が登場し、いよいよ5G対応スマホが世界的に拡大することが現実味を帯びてきました。

5G通信のsub6帯に対応する「ピクシオSR」は、2020年発売の5G対応スマホのフレキシブルプリント回路基板用部材に採用されています。

ミリ波帯対応の「ピクシオIB」に関しては、2021年から本格販売が予定されています。2020年10月から、一部の電子部品メーカーに対してサンプルの提供が開始されています。

5Gは伝送損失をいかに抑制するかがカギになる

第5世代移動通信システムである5Gは、高速・大容量通信を可能にする通信技術として注目を集めています。10GHz以上の高い周波数帯の電気信号を用いることで、高速・大容量・低遅延・同時多数接続通信が実現されます。

カネカは以前より、データ通信量が多くなる5G向けに、通信ロスを最小限に抑えたフィルムの研究を進めてきました。2023年には、5G対応のスマホの生産台数が約三割を占めるようになると推定されています。高い周波数帯における伝送損失が低い回路基盤のニーズは、ますます高くなっていくでしょう。

超耐熱ポリイミドフィルムの「ピクシオ」シリーズは、sub6対応の「ピクシオSR」に続き、ミリ波対応の「ピクシオIB」が加わります。低伝送損失を実現するとともに、優れた加工性を持つ製品です。今後はスマホを始めとするデジタルデバイスの高機能化を支えてくれるでしょう。カネカでは、販売を拡大し2023年には売上高150億をめざすと発表しています。

まとめ

今回はカネカから発表された、最新の超耐熱ポリイミドフィルム「ピクシオIB」について解説しました。

5G通信の普及により、4G時代と比べても格段に利便性が増すことが予想されています。しかし伝送損失による問題も懸念されており、いかに通信ロスを抑えるかが重要課題と言えるでしょう。

カネカが開発した「ピクシオ」シリーズは、5G対応の周波数帯に対応する超耐熱ポリイミドフィルムです。既に発売されているsub6対応の「ピクシオSR」だけではなく、ミリ波対応の「ピクシオIB」もラインナップに加わりました。本格的な発売は2021年予定となっていますが、既にサンプル提供は始まっています

カネカは今後もさまざまなソリューション向けに、高速情報通信を支える製品を提供する方向性を示しています。5G時代に向けて、カネカの今後の動向から目が離せません。