KDDIが小学校で全国初の5G体験授業を実施。5Gとこれからの学校教育との関わりは?

KDDIが小学校で全国初の5G体験授業を実施しましたが、学校はこれからどのようなカタチで5Gと関わってくるのか、そして教育はどの様に変化していくのでしょうか。

今回は、現状の教育現場と5Gが実現化することによっての未来の学校教育の可能性について言及していきたいと思います。

KDDIの体験授業内容と狙い

2018年11月21日から2018年12月12日まで、株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (以下 ATR)、KDDI株式会社、小金井市立前原小学校 の三者は、小学校の授業で5Gを活用した動画再生とファイルダウンロードを体験する学習を国内で初めて実施したと2019年1月に発表しました。

今回の実証実験、および体験授業では、同小学校の体育館に28GHz帯の実験システムを使ったエリアを構築。児童らは5G対応の端末とWi-Fi対応の端末で、同時に動画再生やファイルダウンロードを行い、それぞれに要する時間の比較などを行いました。

Wi-Fiではダウンロードに平均101秒かかった動画が、5Gでは平均わずか17秒でダウンロードが完了。5Gを活用することで、これまで困難だった大容量のコンテンツが短時間で送受信可能になることが実証、体験できたといいます。

こういった実験を小学校の体験授業として行うことに関しては、『IoTデバイスや通信を体験し、楽しんでもらいたい、わくわくしてもらいたい』という狙いがあります。

体験授業を通して、興味を持ってもらうことで次世代を担う子供たちにより良い影響を与えることも、教育現場の1つのあり方であるかもしれません。

また、教育現場においてIoTデバイスや通信機器を利用することへの保護者の理解も得られやすくなることも考えられます。

現状の教育現場とは

ICT教育について

これまでの教育現場は、いわば寺子屋の時代からそれほど大きな進化はしておらず、鉛筆と紙で勉強をすることが当たり前でした。

そこにPCやタブレットが導入されれば、アナログだった教育現場が一気にIT化するのも近い未来かもしれません。

2019年に発表された文部科学省による学校教育の情報化の実態調査では、教育用のタブレット導入が年々増加傾向にあるとされ、平成26年から平成29年の3年間で、その導入台数は5倍にもなったといいます。

※文科省資料よりhttps://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/07/1399330_01.pdf

タブレットの導入や、5Gの利用開始により映像を使用しての授業が可能になることで、より可視化され、授業内容の理解を深めるきっかけになります。

ICT教育のメリット

ICT教育が注目されているのは、生徒だけでなく、教員側にもメリットがあるからです。今後5Gの利用が開始されることでますますその需要は高まります。

下記にメリットを5点紹介します。

今までの授業では実現できなかった事ができる。

5Gを利用するとリアルタイムでの遠隔視聴が可能になるので、場所や時間を選ばない、新しい形の『校外学習』が生まれます。海外の学校の生徒たちとの交流をすることで、よりグローバルな授業の実現も可能です。

生徒が授業に参加しやすくなる。

普段は挙手をして発表などがしにくい生徒も、インターネット上で手をあげたり、ペアを組んで共同作業をすることで、授業に参加しやすくなります。
2012年から、アクティブラーニングという生徒が能動的に授業に参加する学習方法が話題になりました。なかなかアナログ教育では変化させるのが難しかったアクティブラーニングも、ICT教育を活用することで解決できます。

過疎化への対策が期待できる。

過疎化の進んだ地域では、専門教科の教員配置が難しかったり、人間関係が固定化されたりという問題がありますが、遠隔授業で多様な教科や考えに触れる機会を作ることが可能になるのです。

効率的に授業を行うことができる

PCやタブレットを使うことで、教科書やプリントが不要になります。また、授業データも電子データで扱うようになるので情報の利活用作業も短縮できます。

生徒のモチベーションが上がる

百聞は一見に如かずではないですが、言葉や文字で説明をするより、実際に目にするほうが理解が深まるものです。5Gでは大容量の動画も数十秒でダウンロードすることができるため、クラウド上などにアップロードされた動画を利用して授業をすることも可能になります。

映像をうまく活用した授業が、視覚や聴覚にダイレクトに情報を訴えかけるため、生徒の理解を深めたり意欲を促進したりするきっかけになります。

ICT教育のデメリット

ICT教育には下記のようなデメリットもあります。

導入費用にコストがかかる

ICT機器の購入はもちろんのこと、ICT教育を導入する際、4G回線ではまかなえない部分があるので、5G対応にする必要があります。キャリアの5Gで行うのか、それともローカル5Gで学校全体のインフラ環境を整えるのか、どちらにせよ費用負担が発生します。

教師にITスキルがなければ難しいのでは?

ICT機器に苦手意識を持つ教員もいます。そのような教員にとっては、授業自体が負担になる可能性があります。

世界から見た日本の教育現場の現状について

だんだんとIT化が進んでいるとはいえ、現状の日本はまだまだ世界に遅れを取っています。研究授業や公開授業の際にはICTを活用した授業が行われているものの、それを日常的に行っている学校は少ないのだといいます。

教育現場のICT化が進んだフィンランドではプログラミング教育が実施されており、国内のほとんどの学校で教科書はデジタル端末になっています。
2016年から義務教育に含まれるようになり、プログラマーの育成やロジカルシンキングをそだてることにも活用されています。
これから5Gが実現化してくることで、更にICTが浸透していくことも予想されそうです。

5Gと未来の学校教育の可能性

近年ではスマートフォンを持つ生徒も増えてきています。

小学6年生は約40%、中学3年生は約80%の子供がスマートフォンを所持しており、友達とのコミュニケーションから遊びまで、インターネットの利用が日常的に行われているといえます。

教育現場ICT化はこれまでになかった様々な課題に直面していきそうです。
「生徒が使う端末には、どのような規制を設けるべきか」「教師のITスキルはどう育成するか」「現場での端末管理やメンテナンスはどう対応すべきか」など、システムばかりが先駆けては追いついて行かないものばかりかもしれません。

ただ、もしかすると、こういった問題を容易に解決に持って行ってくれるのも、もしかしたら5Gである可能性もあります。

まとめ

KDDIの5G体験授業から、ICT教育のメリットデメリット、そして今後の未来について予想してみました。
これからの教育現場では、未来を担う大事な人材教育として、それこそプログラミングの授業も必須となってくることでしょう。
教師のITスキルに関しては遠隔視聴技術では解決できないでしょうか?規制、メンテナンスや端末管理もIoT機器でできるかもしれません。
はたまた、これまで沢山の時間を要したダウンロード、アップロードも5Gであればわずか数秒。VRなどの映像を使用した授業も実現化されてきそうです。

5Gは教育現場のICT化を加速させる要因にもなりそうだと感じています。