百貨店にローカル5Gを導入すると何ができる?導入のメリットでメリットを解説

いよいよ始まる5G(第5世代移動通信システム)サービス。高速、大容量、低遅延、多接続と多くのメリットがある5Gはモバイル通信の体験を変えると期待されています。それだけに留まらず、IoTやスマートファクトリーといった形で企業や自治体でも活用できるポテンシャルを秘めています。
総務省は地域や多様な企業のニーズに応じて、企業や自治体が自営網で5G通信網を構築してIoTやスマートファクトリーで活用できる「ローカル5G」を打ち出しました。ローカル5Gは小売店や百貨店においても活用が想定されています。今回は百貨店でのローカル5G活用に焦点をあて、メリット・デメリットについて見ていきましょう。
Contents
百貨店にはローカル5Gを導入すべきか
小売業や百貨店においては、お客様が何を求めているのか知ることで、商品やサービスを充実させ業績アップに繋がります。ローカル5GやIoT技術を活用することで、より正確なお客様情報が手に入ります。現在、消費者のマーケットがEC化しているのをご存知でしょうか。小売業界ではネット通販の売上が急激に伸びており、実店舗からシフトしつつあります。経済産業省が公開しているアパレル産業のデータを見ると、ネット販売の売上が伸びているのが一目瞭然です。
2017年国内全商品取引 | 14兆2582億円 |
ネット通販 | 1兆6454億円(11.54%相当)
※2016年と比較して7.56%の伸び率 |
ネット販売はお手軽さに加えて、閲覧履歴からお客様個々人が求める商品・サービスを的確に割り出してくれます。お客様が求める商品をオススメで提案することにより、売上を伸ばす効果もあるようですね。
ローカル5GとIoT技術の導入により、百貨店でもお客様の動向がデータ化、分析できるようになります。ネット販売と同じようにオススメ商品の提案が行えるようになるので、業績アップが期待できます。
近年ではサービス業や小売業においてもデジタル活用が急速に進んでいます。Wi-Fiと比べても、ローカル5Gは安定性が高い通信ができるとされています。お客様の興味・関心、来店時の行動、購買情報などを正しく把握して、より行き届いたおもてなしを提供してください。
百貨店にローカル5Gを導入するメリット
複数の事業・サービスを展開し、規模の大きい百貨店。ローカル5Gを導入する百貨店ならではのメリットを見ていきましょう。
デジタルサイネージの利用
ローカル5Gを構築することによって、最新の情報を入手・配信することが可能となります。さまざまな商品・サービスがインターネットにつながることで、リアルタイムの情報が強化されます。たとえばデジタルサイネージを利用すれば、商品の在庫状況や、混雑時の空席情報をお客様にお届けすることが可能です。実演販売やイベントの中継も行えるので、販売促進効果も期待できますね。
災害時の案内などに活用できる
地震や台風などの災害発生直後には、家族や取引先からの安否確認の電話やメールが殺到します。ローカル5Gの特徴の一つに、多数接続があります。この特性は災害などの非常時にも大いに活かされるでしょう。また施設内に多数設置された高精細な映像センサーにより、データ収集を行い活用することで、災害情報を網羅的に把握することも可能となります。この情報により、施設内の被災者に的確な避難経路情報をスピーディーにお届けできるので、避難しようとしている人たちを確実に誘導できるでしょう。
ネット販売を超える顧客体験の提供
近年ではネット販売の売上が伸びていると解説しました。ローカル5Gを導入することで、実店舗においてネット販売を超える顧客体験をお客様に味わっていただけます。既に5Gサービスがスタートしている海外では、5GとIoTの活用による成功事例も報告されています。
アメリカ合衆国を拠点とするジーンズ大手メーカーの「Levi Strauss & Company」を例に見てみましょう。こちらはIoT技術の活用により、商品動向データを収集し、顧客体験の改善と強化に乗り出しました。具体的には店舗内の全商品にRFIDタグをつけ、商品の動きを追跡・分析したそうです。これにより以下のような情報が、リアルタイムで分かるようになりました。
・商品が手に取られた動き
・試着された動き
・最終的に購入された動き
ネット通販と同様の閲覧履歴を実店舗でも把握できるようになり、商品在庫状況や配置などもスタッフが容易に探し出せるようになりました。この例において、RFIDタグは近距離無線通信(NFC)が読み取っています。同じようにローカル5GでRFIDタグを読み取れば、日本の百貨店においても同様に活用できるでしょう。よりニーズの高い商品・サービスが取り揃えられるので、来客数・売上・顧客満足度アップに繋がりますね。
百貨店にローカル5Gを導入するデメリット
百貨店にローカル5Gを導入するメリットは盛りだくさんですが、デメリットがないのかも気になりますよね。ローカル5Gを導入するデメリットについても、確認してみましょう。
免許取得が必要になる
ローカル5Gを導入する場合には、電波法第4条で定められた無線局の免許の申請が必要とあります。免許申請は常時受け付けられていますが、標準的な処理期間は1ヶ月半程度であるとされています。免許申請から期間がかかることと、複数の書類を用意しなければならないことから、面倒に感じてしまうかもしれません。なおローカル5Gの免許申請には以下のようなものが必要になるので、用意しておきましょう。
・無線局免許手続規則(昭和25年電波監理委員会規則第15号)で様式が定められた「無線局事項書」及び「工事設計書」
<自己土地利用の場合>
・エリアの範囲を示す図
・登記事項証明書
<システム構築の依頼を受けている場合>
・依頼状およびその証明書類 など
電波利用料がかかる
ローカル5Gは周波数免許を取得し、年額の電波利用料を支払って利用することになります。電波利用料は無線局の種類、出力、設置場所などに応じて決まる仕組みとなっています。ローカル5Gの無線局及び、NSA構成で利用する自営等BWAの無線局には、以下の電波利用料が年額で適用されるので覚えておきましょう。
ローカル5G(28.2-28.3GHz)
基地局 | 2,600 円/局 |
陸上移動局(包括免許) | 370 円/局 |
自営等BWA(2575-2595MHz)
基地局※ | 19,000 円/局 |
陸上移動局(包括免許) | 370 円/局 |
※…空中線電力が 0.01W を超える場合
安定性への不安
高い安定性が特徴の一つであるローカル5Gですが、データが増えて電波が混み合うと遅延の恐れがあるとも懸念されています。2020年2月7日、政府は複数の事業者が電波を共同で使いやすくする電波法改正案を閣議決定しました。時間帯によって空いている電波を携帯事業者が使えるようにして、高速通信規格「5G」用に振り向ける予定であるとされています。電波法改正案の閣議決定に伴い、電波を集中させ、サービスを安定させていく取り組みが進められていくでしょう。
まとめ
今回は百貨店でローカル5Gを導入するメリットについて主に触れました。
ネット販売が伸びている昨今ですが、ローカル5GとIoT技術の活用により、実店舗でもネット販売同様のサービスが実現できるようになるかもしれません。商品動向データやお客様情報を収集&分析することで、一人一人に適した商品・サービスの提案が実現できるようになります。
さらにネット通販とは異なる実店舗ならではのおもてなしも提供できるので、顧客満足度アップにも繋がりますね。今後普及が進んでいくと思われるキャッシュレス決済と合わせることにより、今まで以上に便利で満足度の高い顧客体験が提供できるようになるでしょう。
5GやIoTを活用したサービスの提供は、海外で既に始まっています。海外の事例に習い、これまでには実現できなかったサービス提供や顧客体験を実現させてください。