飲食店におけるDXと5Gの活用

近年は飲食業界の売上アップを狙うのが、なかなか難しい状況になっています。不景気や人口減少に続き、新型コロナウイルスの感染拡大もあって、営業短縮や閉店を選ばざるを得ない店舗も増えてしまいました。
この状況を打開すべく、テイクアウトやデリバリー、Webサイトからの注文など対策を取る店舗も増加しています。飲食店がこれからの時代を生き残るには、新システムやネットワークを活用した仕組み作りが大事な要素となるでしょう。そこで今回は、飲食店におけるDXと5Gの活用について解説します。飲食店におけるDX、活用方法、メリットなどをお伝えしますので、ぜひ目を通してみてください。
Contents
飲食店におけるDXとは
デジタル技術やデータを活用して、ビジネスを変革させる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。まずは飲食店でどのようなDXが行えるのかを見ていきましょう。
ネットと実店舗の融合
現代はネットの発達もあり、実店舗だけでの売上アップを狙うのが難しい状況です。そこで活用したいのが、ネットと実店舗の融合です。最近はクラウドでデータを保存・共有が可能になっています。複数の実店舗の在庫状況や売上状況などをリアルタイムで確認して、データを活用した戦略を練りましょう。
たとえばPOSレジやキャッシュレス端末からの、ネットを通してデータ収集・分析が行えます。これらのシステムも、ネットの実店舗の融合の一つと考えてください。また各店舗の在庫状況などをネット上で管理しておけば、足りなくなった物をアラートで受け取ることも可能です。店舗側は在庫管理にかかっていた人員や時間をカットできるので、業務効率化や人件費削減に繋がります。
顧客情報の分析
POSレジ、クラウドカメラ、テーブルオーダーシステムなどは、顧客情報の収集や分析にも活用できます。どの時間帯にどんな年齢層・属性の来客数が多いかといった情報は、新サービスやメニュー作りに役立ちます。時間帯や属性ごとの客単価の割り出しや、人気メニューの絞り込みにも活かせるでしょう。反対に人気のないメニューを減らし、仕入れをカットすることで、無駄なコストを削減できます。
顧客行動データを収集・蓄積・分析し、好みに応じた提案を行うことで、顧客満足度やリート率の向上にも繋がります。飲食店にとって、リピート顧客の獲得は生命線です。蓄積したデータを活用して、優良顧客の獲得に役立てましょう。
メニューの電子化
新型コロナウイルスの影響もあって、感染予防対策を取っている飲食店の需要が高まっています。最近では、飲食店向けに既存の紙メニューを電子化できるサービスも提供されています。表示されたQRコードを読み込むだけで、お客様のスマートフォンに電子メニューが表示され、注文できるようになります。
コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、不特定多数の人が同じ紙メニューを使い回すリスクも指摘されています。感染予防対策の一環として宣伝することで、お客様に自店舗を選んでもらうメリットとして提示できるでしょう。
キャッシュレス化
近年の日本では、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などのキャッシュレス化が普及しています。飲食店がキャッシュレス化するメリットとして、現金管理作業の削減が挙げられます。飲食店では店舗経営に関わる重要な作業として、毎日のレジ締め作業が欠かせません。従来はレジ内の現金と会計ジャーナルの数字を確認する作業に時間を取られていました。
しかしキャッシュレス化することで、会計情報がデータとして表示されます。現金を数える必要がなくなり、数字が可視化されることで、業務効率化に繋がります。また新型コロナウイルスの影響で、非接触型のやり取りが求められています。直接紙幣や硬貨のやり取りをしないキャッシュレス決済は、ますます需要が高まってくるでしょう。
デジタルサイネージの設置による接客の自動化
デジタル看板・広告であるデジタルサイネージは、お客様とのコミュニケーションや接客を自動化してくれます。サイネージにはお店の混雑状況や予約状況を表示することも可能です。また人気メニューや時間帯・季節に適したメニューも、遠隔操作で簡単に切り替えられます。
またタッチパネル式のサイネージでは、お客様が経っちすることで、欲しい情報をピンポイントに探すことも可能です。サイネージと同時にAIロボットを導入すれば、より効率化が進むでしょう。たとえば卓上のサイネージで注文を取り、AIロボットが料理を運ぶといったことも可能になります。接客が自動化され、非対面・非接触でのやり取りが実現できます。
予約伝票のデジタル化
予約伝票をデジタル化できるシステムも、今後の飲食店にとって重要なシステムです。現在主流の予約システムは、電話予約、来店予約、ネット予約にも対応しています。紙の伝票では一度予約をメモに記入し、その後予約台帳などに転記する必要がありますよね。その際に記入ミスが発生したり、急な変更があった時に書き換えを忘れたりといったトラブルが発生しがちです。デジタル化でパソコンやタブレットで管理することで、ミスの発生を防ぐと同時に、業務効率化が図れます。
また予約履歴を蓄積することで、顧客情報の管理も行えます。蓄積した情報はサービス向上やリピーター顧客の獲得にも活用できるでしょう。さらに予約情報を元に売上分析をすることで、配席管理や回転率も把握できます。クレジットカード登録、事前払い、リマインドメールなどの機能を利用すれば、急なキャンセルを防止する効果も期待できます。
飲食店におけるDXと5Gの関係とは
2020年春より日本国内でもサービスが開始した、次世代通信規格の5G。これからの時代にDXを行う上で、5Gの存在は欠かせません。4G時代よりもさらに進化したネットワークにより、本格的にIoT時代が到来し、モノと人とが繋がるようになっていくでしょう。たとえば4Gと比べると、5Gには以下のような特徴があります。
・高速、大容量通信
・多数同時接続
・低遅延
5Gは製造業や医療、自動車産業、セキュリティなど多くの業界に変化をもたらします。もちろん飲食業界も例外ではありません。5G時代は飲食業界でもDXが進められ、IoT機器を活用したネットワークが盛り上がることが予想されています。収集できるデジタルデータが増え、そのデータを活用することで、消費者動向をより正確に把握できるようになるでしょう。
データ分析により、適切な時間に適切な人員を配置することで、料理提供のスピードなども改善されます。お客様の嗜好を分析し、新メニューの開発にも役立てられます。口コミ情報や顧客情報を組み合わせることにより、ユーザーごとに好きなメニューを上位に表示させることも可能となるでしょう。
飲食店でDXを行う方法
飲食店のDXは、「①データ収集」「②分析・可視化」「③AI開発」と順を追って経営システムを作り上げることで成果に繋がります。昔から営業している飲食店では、経営者やスタッフの勘や経験に左右されやすい傾向にあります。しかしノウハウを持つスタッフが第一線を退くことで、売上の低下に繋がるという問題もありました。そこでゑびやは勘や経験だけではなく、データを根拠とした経営に切り替えました。主に以下のようなプロセスでDXが行われました。
①Webサイトからデータを抽出
店舗の来店データ以外にも、気象情報など来店予測に使えそうなデータをWebサイトから抽出。自分たちの手で行うと労働時間の長時間化、ミスが発生しやすいことから、システム会社に依頼してデータを抽出してもらう方法も採用しています。
②BIツールによるデータの可視化
収集したデータがどんな意味を持っているのか、分析する必要があります。ゑびやでは専門的な分析・可視化が行えるスタッフがいなかったので、BIツールを導入することでデータを可視化しました。
③AIによる来店予測
システム会社に協力を要請し、収集データを機械学習させ、分析・可視化ができる「来店予測AI」を開発。適切な人員配置ができ、料理提供スピードなども改善されたことから売上4.8倍、利益率10倍という成果をあげました。
ゑびやが行ったDXのプロセスは、まさに飲食店でDXを行う際に参考にしたい方法なので、ぜひ参考にしてください。
飲食店のDXで5Gを活用する場所
現在の飲食業界では、来客店数の予測、料理・サービスの品質向上、接客の自動応対などにDXが活用されています。さらに5G時代の到来で、飲食店活用できるDXは幅を広げていくと予想されています。
・デジタルマーケティング分野とくに注目を集めているのが、デジタルマーケティングの分野です。従来の飲食業界では料理と接客がメインで、マーケティングが重点的に行われていないケースも見受けられました。しかし情報化が進んだ現代では、いかに顧客を獲得できるかが重要な課題となっています。5Gは低遅延によるリアルタイムのコミュニケーションや、多接続による多面的なデジタル体験が実現できます。
この特徴をデジタルマーケティングに活用すれば、集客やリピーター顧客の獲得に活かせるでしょう。たとえば店内のライブ映像を高画質、高品質で配信するという活用方法が想定されます。店内の様子や混雑状況、または調理風景などをライブタイム動画として配信することで、宣伝・集客効果が見込めます。
カメラとAIを組み合わせた顔認証で、どのお客様がどれくらい来店したかも分かるようになるでしょう。あいまいな記憶に頼るのではなく、以前注文されたメニュー情報や食の好みが、誰でも正確に把握できるようになります。リピーターの獲得方法として活用が期待できます。情報発信はもちろんのこと、顧客データ収集・蓄積、共有ハードルを下げることから、これまでにない新たなサービスの創出も期待できるでしょう。
まとめ
今回は飲食店におけるDXについて解説しました。5G時代の到来により、あらゆる業界でIoT化が進んでいくと予想されています。飲食業界も例外ではなく、DXにより業務効率化やコスト削減、リピーターの獲得などで効果が期待されています。勘や経験での経営が行き詰った飲食店が、DXにより劇的に売上を向上させた事例もあります。
情報化がますます進む現代において、自店舗の良さを売り出し、顧客の心を掴む為にもデジタル化は欠かせません。飲食店のDXは、店舗側だけではなく、顧客に対しても価値を提供できるかが成功の要となります。DX化により集めたデータを有効活用して、これからの時代の経営に活かしてください。