ドコモの瞬間5Gと他社5Gは何が違う?今後の動向をチェック

5G対応iphone「iphone12」シリーズが発表され、iphoneユーザーの多い日本では、急速に5Gスマホに切り替えるユーザーが増加しています。ところが5Gエリアは、スポット的な展開となっており、どこでも5Gが繋がるという訳ではありません。
そんななか11月5日に、NTTドコモが新商品発表会で「瞬間5G」を打ち出しました。5Gスマホに乗り換えようと気になっていた方の中には、ドコモの瞬間5Gと他社の5Gは一体何が違うのかと感じていることでしょう。本記事ではドコモの瞬間5Gと、KDDI・ソフトバンクの5Gの違いについて解説していきます。
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ドコモが「瞬間5G」を発表
2020年11月5日にNTTドコモの新サービス・商品の新作発表会が行われました。NTTドコモ社長 吉沢氏は会見の中で「ドコモは3つの周波数地にこだわり、瞬間5Gを展開していく」と発表しました。
ドコモが5Gではなく「瞬間5G」と打ち出したのは、5G基地局のエリア拡大で争うKDDIとソフトバンクの2社との差別化を図るためでしょう。
瞬間5Gは他社の5Gと何が違う?
ドコモが打ち出した「瞬間5G」と、KDDI・ソフトバンクの2社が発表する「5G」では、大きく分けて「技術・今後の基地局数・通信速度」の3つの違いがあります。それぞれの項目からドコモの瞬間5Gと2社の5Gの違いについて見ていくと、ドコモが独自で瞬間5Gと名付けた理由が発見できるでしょう。
瞬間5Gと他社5Gの違い①:基地局に使われる技術
ドコモは5G専用の基地局を新しく建てる方針ですが、2社は同じ周波数帯で4Gと5Gを共有させる「DSS(動的周波数共用)」という技術を使い、転用5Gを普及させる考えです。新しい基地局を建てずに、既に全国にある4G基地局を使う予定となっています。
瞬間5Gと他社5Gの違い②:今後の5G基地局数
ドコモが5Gエリアを拡大するには、新たに5G基地局を建てる必要があります。そのため2023年3月時点での5G基地局数は、3万2000局を予定しています。
一方、既存の4G基地局を使うKDDIは、同年月時点で5万局に到達すると、これまでよりも2年近い計画前倒しを発表しました。ソフトバンクも計画の前倒しを発表しており、全国に5Gが普及するのは、KDDIとソフトバンクの2社の方が速いと言えるでしょう。
瞬間5Gと他社5Gの違い③:通信速度に差がある?
DSS技術を使った転用5Gを、ドコモは「なんちゃって5G」と評し、消費者に優良誤認を与える恐れがあるとけん制しています。NTTドコモ社長 吉沢氏は「4G帯域を5Gに転用しただけでは、5Gの特徴である高速通信は実現されない。スマホ上部には5Gと出るが、4Gと速度は変わらない」と発表しています。
(参考:ドコモの5Gネットワーク展開戦略)
ドコモとしては、時間をかけてでも、5G本来の速度を普及させたい考えです。爆発的に普及するKDDIとソフトバンクの「なんちゃって5G」に対抗するためにも、瞬間5Gと独自の名前をつけ、速度をPRしていくのでしょう。
各キャリアの足並みが乱れた理由
ドコモとKDDI・ソフトバンクの動きが異なったきっかけは、総務省の発表がきっかけです。
総務省は「2023年度末までに携帯各社が整備する5Gの基地局数を、当初の3倍となる21万局以上に引き上げる」と発表しており、2020年9月からは「既存の4Gを5Gに転用できる」よう省令改正を行いました。国としては、5G基地局のルールを緩和することで、各キャリアの5Gエリアを拡大したい考えです。
総務省の発表に対するドコモの動き
ドコモは、4G基地局を5Gに転用することに消極的です。これまで通り、新周波数の5G基地局を設置し、5G本来の速度をユーザーに提供する考えでしょう。しかし5Gの周波数帯は、障害物に弱く提供範囲が狭いという特徴をもっています。そのため4G基地局よりも細かい間隔で5G基地局を設置しなければなりません。ドコモの5Gエリアが全国に普及するのは、KDDI・ソフトバンクに比べて遅くなるでしょう。
総務省の発表に対するKDDI・ソフトバンクの動き
KDDIとソフトバンクは、総務省の発表した転用5Gを、積極的に拡大させたい考えです。転用5Gであれば、既存の4G基地局を利用できるため、新たに5G基地局を設置するよりも時間と費用を削減できるでしょう。また5Gエリアを短期間で全国普及できれば、PR効果は絶大です。家や職場が5Gエリアになったら5Gスマホに買い替えたいというユーザーを、獲得するチャンスが広がります。
DOSSのメリット・デメリット
KDDIとソフトバンクが積極的な転用5Gには、DOSSという技術が使われています。DOSSは、同じ周波数帯域で、4Gと5Gのどちらの電波も使える技術です。DOSSを使うことで、4Gと5Gを切り替える手間なく、接続をすることが可能になります。また既存の4G基地局を活用できるため、新に5G基地局を建てる必要はありません。コストや時間を削減しつつ5Gエリアを拡大できるのが、DOSSのメリットと言えるでしょう。
しかし本来の5Gの通信速度と比較すると、遅くなるのがDOSSのデメリットです。4Gから5Gに転用すれば通信方式は5Gであるなものの、周波数の幅は変わりません。そのため5Gの魅力である超高速通信や超低遅延、多数同時接続を実感することは難しいでしょう。
また、DOSSを使うと5Gだけでなく、4Gの速度が下がることが懸念されています。ドコモでは、本来の4Gから数十%速度低下するのではないかと見込んでいますから、なおさらDOSSの導入には消極的です。
ドコモが政府に要請する考え
時間がかかってでも高速通信を追及するドコモは、4Gを5G転用する技術について「優良誤認」に繋がる恐れがあるとしています。スマホ上部に5Gと書かれているのに、実際の速度が4Gと変わらなければ消費者は困惑しますし、キャリアへの不信感へ繋がるからでしょう。そのためドコモは総務省や政府に、5Gエリアマップに「本来の5G・転用5G・4G」の3つを区分することを求めています。
それでもドコモが不利になる?
KDDIやソフトバンクの5Gを「なんちゃって5G」とけん制するドコモですが、一般消費者が5Gの速度を肌で感じる機会は、まだそうありません。ドコモは本来の5Gの速さと、転用5Gの速度の違いを消費者にアピールする必要があるでしょう。
今後5G基地局が広まっていけば、KDDIとソフトバンクは「5Gエリアの広さ」を積極的に打ち出すはずです。ドコモの今後の動きに注目が集まります。
まとめ
各キャリアが提供する5Gには、通信速度や提供範囲に違いがあります。ドコモは5G本来のスピードを活かした通信を実現したい考えですが、KDDIとソフトバンクと比較すると、普及の遅れは明らかでしょう。時間はかかっても質を高めたいドコモの動きに、今後も目が離せません。また気になるのが、5G本来の通信を活かしたサービスやアプリが、登場していない点です。5Gが広まっていない現在は、ユーザーの多くが4Gと5Gの速度の差に気づくことはないでしょう。今後5Gの持ち味を生かしたスマホコンテンツが登場するのか期待しましょう。