【徹底解説!】ドコモ、au、ソフトバンク、大手キャリアの5G戦略とは

2020年秋、総務省の省令改正によって、4G周波数の一部を5Gに転用できるようになりました。これに伴いauやソフトバンクは4G電波を転用した5G普及計画を打ち出しています。一方でドコモは転用についてあまり積極的でない姿勢を示しており、日本の携帯大手3社の5G戦略に対する違いが見えています。
今回はドコモ、au、ソフトバンクの5G戦略について見ていきましょう。また4G電波を5Gに転用するメリット・デメリットについても解説していきたいと思います。
Contents
総務省が5Gの早期普及を促すため省令を改正、4G電波の5G転用を認可
総務省は5Gの早期普及を促すべく、省令改正で4G電波を転用できる制度を整えました。KDDIとソフトバンクは省令改正を活用し、2021年度末までに5G基地局を全国に5万局整備する方針を掲げています。
総務省もKDDIとソフトバンクに対して、4G電波を転用するサービスの計画を認可しています。一方でNTTドコモは、4G周波数の転用に疑問を投げかけています。ドコモも転用自体は否定せず行う予定となっていますが、拡大には慎重な態度を示しています。
国内における5Gサービスは2020年の春にスタートしました。しかし現時点では基地局の問題などもあり、利用できるエリアはまだ少ない状況です。日本では5G用電波として以下の周波数帯が採用されています。
・Sub-6;3.7GHz帯や4.5GHz帯
・ミリ波:28GHz帯
これらの5G専用周波数帯は新規で基地局を整備しなければならないので、利用できるエリアが限定的になっています。こうした問題を解決するのが、4G周波数帯の転用です。
既存の4G基地局は一部ソフトウェアのアップデートを行えば、5Gの電波が出せるようになるでしょう。
転用した電波は多数の機器に同時接続でき、産業利用が加速すると期待されています。4Gの基地局は全国にあるので、4G電波を利用すれば5G普及のスピードは劇的に上がるでしょう。ただし通信速度自体は4G波に留まると予測されているので、その点は注意が必要です。
ドコモの5G戦略とは
ドコモは4G周波数の転用について、5サービスの普及につながるので制度化には賛成しています。しかし4Gから5Gへの転用を行うと、4G電波を転用した場合でも、エリアマップなどでしっかり区分けする必要があると主張しています。
何故ドコモは4G電波の転用に、積極的ではないのでしょうか。ドコモは通信方式が5Gになる一方で周波数の幅は変わらないため、5Gの特性である高速・大容量が実現不可能という立場を示しています。そのため4G電波の5G転用自体は行う予定ですが、同時に慎重な姿勢を示しているのです。
ドコモは「n78」と呼ばれる3.7GHz帯と、「n79」の4.5GHz帯、「n257」の28GHz帯の3周波数帯が割り当てられています。都市部はSub-6の「n78」「n79で」でカバーし、エリアを徐々に広げています。それぞれの帯域幅は、「n78」と「79」が100MHz幅、n257が400MHz幅となっています。
ドコモは5Gエリア拡大の方向性として、5G周波数の基地局を増やすという正攻法を選びました。2023年度末までに全国2万局の実現を目指し、2020年度末には全政令指定都市を含む500都市を実現すると発表しています。
auの5G戦略とは
KDDIは5Gサービスエリアを早期拡大させるために、4G電波の転用に積極的な姿勢を見せています。総務省の認可も得たので、2021年4月には運用を開始する見込みとなっています。転用する周波数帯は、4Gと5Gで共有することになるでしょう。
転用されるのは700MHz帯と1.7GHz帯です。700MHz帯は低周波数帯のプラチナバンドなので、効率的にエリアを広げられると期待されています。
KDDI代表取締役社長の髙橋誠氏は、2021年3月末で約1万局、2022年3月末で約5万局になる方針を発表しました。5G周波数の基地局も増設すると共に、転用を併用することでエリアを拡大する姿勢を打ち出しています。現時点で転用される周波数は700MHz帯と1.7GHz帯ですが、今後は他の周波数帯でも転用が進められるかもしれません。
ソフトバンクの5G戦略とは
ソフトバンクも総務省に4G周波数帯の5G転用計画を提出し、無事認可されました。従来の4G向けに割り当てられた帯域を、5G方式でも利用できるよう整備を進めています。ソフトバンクで転用される4G周波数は、700MHz帯と3.4GH帯となっています。
ソフトバンクの宮内謙社長は、晩秋から2021年にかけて5G祭が始まり出すと思っているとビジョンを語っています。2022年3月には5万局の5G基地局を展開することを明かしました。この中には転用分の基地局も含まれています。
4G電波の転用は「なんちゃって5G」?
早急に5Gエリアを拡大する上では、4G電波の転用が効率的と言えるでしょう。その一方でドコモが指摘するように、高速・大容量といった5Gの特性がフルに活かせないので、「なんちゃって5G」ではないかとの指摘もあがっています。4G電波の転用にはどんなメリット・デメリットがあるのか、見ていきましょう。
4G転用のメリット
4G転用には、以下のようなメリットがあります。
広域なエリアをカバーできる
4Gの転用は、広域なエリアで5Gサービスが提供できるというメリットがあります。ソフトバンクとKDDIは2022年度末までに、人口カバー率を90%に引き上げると計画を発表しています。4G基地局は全国的に多いので、新たに5G専用基地局を整備する必要がありません。5G周波数ほどの速度の実現は難しいと予測されていますが、速度よりも広さを優先的に考える人が多いとも言われています。
5Gサービスの普及につながる
二つ目のメリットは、5Gサービスの普及にあります。2020年春にスタートした5Gですが、利用状況は芳しいとは言えません。5Gが全国的に使えるようになるまでは4Gスマホを利用するといった声も、よく耳にします。そのためまずは5Gが利用できるサービスエリアを拡大し、5Gユーザーを増やすのが喫緊の課題とされています。4G電波を転用すれば、カバーエリアが劇的に広がるのでサービス普及にもつながるでしょう。
4G転用のデメリット
4G転用には以下のようなデメリットもあるので気をつけましょう。
「5G」と表示されるのに性能が出ない
4G電波を5Gに転用する場合、5Gの特性が活かせなくなるという懸念の声もあります。「高速大容量」「超低遅延」「多接続」という3つの特徴があります。しかし4G電波を転用した状況では特性が活かせず、4Gとほぼ変わらない速度しか出ないでしょう。せっかく5Gを使っているのに、5Gの恩恵があまり受けられない可能性が指摘されています。
4Gの通信速度が低下する可能性もある
現時点では4Gユーザーの方が多いので、一つの周波数帯を全部5Gにするのは現実的ではありません。そのため基本的には、接続する端末の割合に応じて4Gと5Gが同じ周波数帯で同居することになるでしょう。結果として4Gユーザーの帯域が圧迫され、通信速度が低下する可能性も懸念されています。
まとめ
今回はドコモ、au、ソフトバンクの大手3社による5G戦略の違いを解説しました。
総務省が省令改正し、4G周波数帯の5G転用が可能になりました。auとソフトバンクは4G電波の転用に積極的な姿勢を見せていますが、ドコモは慎重な態度を示しています。
4G電波の転用は広範囲をカバーできるので、5Gサービス普及率を上げることも期待されています。その反面、高速・大容量といった5Gならではの特性が活かせないので「なんちゃって5G」との指摘も受けています。
5Gサービスの普及には年単位かかると言われており、とくに今後2,3年が勝負所だと見なされています。各社の5G戦略がどんな結果になるのか、今後も目が離せません。