5Gのエリア拡大はコロナの影響を受けるのか

現在世界的にも感染が拡大している新型コロナウイルスの影響で今後の5Gのエリア展開にも支障が出るのではという見方が出てきています。外出自粛によってオンラインでの授業やリモートワークなども普及してきている中、一刻も早い5G通信の普及が必要とされているわけですが、この、コロナウイルスの影響はいったいどのように5Gのエリア拡大に影響を及ぼすのでしょうか。
今回はコロナウイルスによる5Gエリア拡大への影響、そして今後の見通しなどについて言及してまいります。
そもそも5Gのエリアはなぜ少しずつしか展開しないのか
そもそも、5Gが始まるとアナウンスされて、実際に開始された時点では5Gが利用できる場所は非常に局地的で、定められたエリアでしか利用することができません。ですので、このエリアが4G同様に広がるまでは各キャリアの5Gスマホを購入したとしても日常的に利用するのは難しいとされています。
では、どうして5Gのエリア展開に時間がかかっているのかといいますと、5Gが使う3.7ギガヘルツ帯や4.5ギガヘルツ帯は4Gが主に使う800メガ~2ギガヘルツ帯よりも電波の回り込みが弱いため、たくさんの基地局を設置しなければならないからです。
更に、放送などの用途で利用する衛星通信と干渉する場合があるため、特にソフトバンクとKDDIは5Gエリアに衛星通信の地上局がないことなどを確認しなければなりません。実際に、ソフトバンクやKDDIなどは、ドコモのように人が多く集まる場所ではなく、3月末時点で人口の多くない田舎へ5G基地局を整備しています。
このように、基地局を多く設置しなければならないことと、地上局等の確認等の手間なども相まって、携帯大手3社の5Gエリアの展開に時間がかかっているといえるでしょう。
コロナウイルスは5Gエリア展開に影響を及ぼすか
現在、コロナウイルスによる外出自粛等の影響で、リモートワークなどが盛んになってきているわけですが、これにより5G基地局の構築に遅れが生じるのではという懸念がされていました。
事実、ドコモの吉澤社長は今月28日に行われたオンライン説明会において、建設工程や物品納入での遅延がエリア展開に影響していることを明らかにし、2021年6月に目標としている1万局の達成は難しくなる可能性を示しています。
ドコモでは現在オンラインショップ等でのスマホ販売において、大容量プランを選択するお客も増えてきたことを明らかにし、それだけ整った通信環境への需要が高まってきていることがわかります。ただ、3月末からは5Gスマホも投入されるなど、5Gの普及に向けて盛り上がりを見せていたものの、基地局整備が予定通りに進まないなどの理由から、5Gが日常的に利用できるようになるのはもう少し先という見方が強いでしょう。
何もこれはドコモに限ったことではなく、ソフトバンクやKDDIでも同様のことが言えます。ソフトバンクとKDDIは今月頭に合弁会社を設立しましたが、5G基地局を構築するには当然建築等も必要になってきますので、3社とも基地局の展開が極めて難しくなってしまう状況になる可能性が高いです。
5Gスマホの流通は
コロナウイルスが影響を及ぼすのは基地局の整備にかぎらず、5Gスマホの流通等もまた同様です。実際にアップル社のiPhoneはコロナウイルスの影響か、予定より1か月遅れで新型iPhoneの発表を行いました。外出自粛により、流通が滞っているため、通信設備や端末の調達にも大きな影響が生じる可能性があります。更には、ショップの営業時間短縮等により、オンラインで手続きができない方などが機種変更をするのが面倒になってしまう可能性も否めません。
実際問題、ドコモでは3Gケータイからスマホへの乗り換えにも影響がでているとしています。2020年中により低価格な5Gスマホの投入も予定していますが、ドコモショップでの営業制限が続くと、5Gへの移行ペースが下がってしまうことになるでしょう。
4Gと5Gの周波数共用を検討中
このように、5Gのエリア展開や5Gスマホの流通にコロナウイルスによる影響が大きく関係してくるとされていますが、そんな中で注目されている技術があります。
それは4Gの周波数帯に5Gを混ぜ込んで5Gのエリアを一気に広げることができる『DSS』という技術です。例えば、プラチナバンドでも5G対応が可能になるので、4Gと同等のエリアを瞬時に構築でき、仮にエリア内で5Gのスマホやタブレットの台数が増えれば、5Gに割り当てる電波の割合を増やしたり、逆に5Gデバイスがなければ、4Gのみに対応するということができるようになります。
ただ、日本では既存の4Gで使われている周波数帯は4G用として割り当てているため、すぐにDSSを導入するのは難しく、総務省などでの議論が必要となってくるとされています。とはいえ、総務省や政府としても5G促進に前向きであるため、これらが認可されれば、一気に5G通信エリアが広がる可能性があります。
現在コロナウイルスの影響で工事等に遅れが出ているとされていますが、新たに基地局を建てたり様々な手続きが滞っている状態です。ですのでもしかすると、この『DSS』が活用されればコロナウイルスの影響を多少受けて少々時間がかかったとしても、1から基地局を構築するよりは断然早く5Gのエリアが展開され、5G通信を日常的に利用することができるようになるかもしれません。
そうすると、コロナ禍で自宅にいる状態でも安定した通信環境を保つことができますのでリモートワークやオンライン授業等も実施しやすくなるかもしれませんね。
まとめ
今回は、5Gのエリア展開におけるコロナウイルスが及ぼす影響について解説いたしました。現状では5Gエリアの展開はコロナウイルスの影響で予定通りに進まず、遅れると予想されていますが、今後総務省の会議で『DSS』の認可がおりれば、一気に全国に5Gエリアが広がる可能性もあります。
現在は自宅から出ずに家の中でインターネットなどを使いながら過ごしているという方も多いはずですので、一刻も早く通信環境が整うとありがたいですよね。とはいえ5G通信は5Gスマホなど、5Gに対応したデバイスでないと利用することができませんので、5Gスマホの流通についても確認しておく必要がありそうです。