中国に学ぶ新型コロナウイルスの対応への5Gの活用

中国湖北省の武漢市から広がった新型コロナウイルスの影響で、現在世界中がパニックに陥っています。日本でも感染防止対策として、先日は政府から小中高の学校では休講が要請されるなどの対策が取られているところです。

こうした中、現在中国ではコロナウイルス感染防止対策や、感染した患者に向けての支援において、5Gを活用した取り組みが始まってきています。実は医療やヘルスケア分野では5Gが大いに活躍すると言われているのですが、実際に現在利活用が始まっている中国ではどのような活用のされ方をしているのでしょうか。

今回は、コロナウイルスの感染防止対策や患者の支援における5Gの活用法についてまとめていました。

5Gを活用したコロナウイルス感染防止対策

厚生労働省によると、3月1日現在コロナウイルスの国内感染者は254名になったと言います。こうした感染症の流行拡大を食い止めるには、早期に患者を特定し隔離することが求められてきます。それらの対策として、日本よりも早く5Gの利用が開始されていた中国では5Gを活用した簡易的な遠隔医療サービスなどが展開され始めています。

5Gを活用したチャット問診

例えば、中国大手生命保険会社の中国平安保険が提供する『平安好医生』では、同社webサイトのトップページに、『感染症問診センター』が設置されました。その表示をタップすると、専用の機器や会員登録などが不要で医者とチャットができるというサービスです。

ただ、この仕組みは初歩的な診療にとどまりますので、発熱や咳などの重い症状があり、感染者と接触した可能性が高いと判断されれば、病院に行くように指示されます。

とはいえ、チャット問診などのウェブ上で患者の対応をするシステムは、病院に人が集まることによる集団感染を防ぐことができたり、効果的に診療することができるようになります。この時、5G通信を利用することで、患者への受け答えをスムーズにすることができたり、患者から送信されてきた写真等をより高解像度で正確に読み取ることができるようになるわけです。

現在、5Gを活用したチャット問診などの遠隔医療の研究は、日本をはじめ世界各国で行われていますが、交通が不便な過疎地などを対象に『医師が訪問しなくても診察が完結する』ということや『高齢者が病院まで来なくても診察できる』等のことを目標にしたプロジェクトがほとんどです。

もっとも、5Gを活用した遠隔医療においては高解像度のカメラや電子カルテ、電子処方箋などの多くのシステムが必要になってくるため、すぐに多くの医療現場で普及するかと言えば、決してそうではありませんが、今回中国で『感染症の拡大防止対策』として遠隔医療が活用されたことから、今後は過疎地だけでなく都心部等でも5Gを利用した遠隔医療サービスは増えていくことになると言えるでしょう。

感染者に関する情報共有への5G活用も

『拡大防止対策』としての対策はもとより、感染者に関する情報共有においても5Gが活用されてきています。中国の多くのマンションでは、ネットワークを利用した検温や入退出管理が行われています。更に、QRコード生成サービスの『草料二維碼』では、スマホからウィチャットを通してQRコードを読み取ることで簡単に体温や初見を無料で記録できるサービスの提供を開始しました。

万が一そのマンション内や居住区域内でコロナウイルス感染者が出た場合に、接触者をすぐに割り出せるようにするためです。

次々に感染者が出てきている中、いかに早く正確な情報を届けるかが課題になってくるわけですが、このような場合にも5G通信を活用することで、よりリアルタイム性のある情報を素早く発信することができるようになります。

また、現在は新規感染者がどのようなルートを通り、どこで感染者と接触したのかを突き止めるにはある程度の時間を必要としているため、その間に新たな感染が広がりかねないのですが、リアルタイムで感染者の情報を配信することで、新規感染の拡大防止対策にもつながります。

コロナウイルス患者のための病院には5Gネットワークを構築

コロナウイルスの患者が急増している昨今、感染拡大防止のための対策だけでなく、患者を受け入れる病院の不足に対する対策もまた急務だと言われています。

武漢では、急増するコロナウイルス感染者を収容するため、わずか二週間で『火神山医院』と『雷神山医院』の二つの病院が建設され、2600床のベッドを確保することが出来ました。これらの病院には5G技術が活用されていると注目を集めています。

日本においても医療従事者の感染が相次いでいる中、武漢の同2医院では、医療従事者の二次感染を防ぐために、IPカメラによる患者の容体モニタリングやロボットによる衣料品郵送を実施することになりました。ただ、広い病院内に通信ケーブルを構築するには時間がかかる上に、従来のWi-FiやLTEでは大量のデータをさばくことはできません。そこへ、中国の大手通信会社、『チャイナモバイル』が両医院に5G回線を整備したことで、それぞれ約500第のテレビ会議システム、監視カメラ、トランシーバーなどが通信できるようになったといいます。

これにより、病院内における遠隔地からの問診にとどまらず、先月26日四川省のコロナウイルス患者の遠隔合同医療が5G通信を通して行われました。感染予防と抑制に必要な人口流動についてビッグデータの分析やサポート業務を5G通信が担っているわけです。

そもそも5G通信は高速で大容量の通信が可能であるとされていますが、中でもこうした感染症対策などの遠隔医療においてはますます5Gの活用が広がっていくのではないでしょうか。

コロナウイルスによる休講でオンライン授業が普及

日本でも、コロナウイルス感染拡大防止対策として先日政府から3月2日より学校は休講を要請され、4月の新学期開始まで春休みが延長される事となりました。これには共働きのご家庭などから批判の声も上がっていたりするわけですが、コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにも仕方のないことです。

中国でも同様に、コロナウイルスの感染拡大による学校の休講や休暇延長が決まっていますが、中国ではそれらの対策による民衆の批判に応える為、『主要科目のオンライン授業』などが開始されました。例えば、学習塾大手の『新東方』も毎週1万分(160時間超)の小学生から大学生までの授業コンテンツを、無料でオンライン視聴できるというものなどです。

一方日本では、学校が多くの宿題を出したり学童保育などを実施するなどするのが一般的な為、いくら子どもに外に出ないよう注意をしても休暇ともなれば、全員が全員守るわけでもなかったり、学童保育などへの登校で外出せざるを得ない等、あまり休講の意味がないのではという声もあります。更に、教師らは休講に伴う休暇期間の課題制作に追われているのが現状です。

しかし、中国の例のようにネットワークを利用した授業コンテンツの視聴や、オンライン授業を実施することで、家に居ながら通常と同じような授業を行うことができるようになります。この、オンライン授業においては、5G通信を利用することで、従来の通信を利用した場合よりもリアルタイム性が増すため、映像や音の遅れによる授業の受けにくさを回避することが可能です。挙手などもネットワーク上ですることができれば、ほぼ通常の授業と大差ないパーフォーマンスをすることができるでしょう。また、課題制作においても、授業コンテンツを活用することで、紙媒体での配布が不要になる為、それらの業務効率化にもつながるといえます。

ちなみに、中国政府の教育部では、オンライン視聴を大学における単位の取得として認める旨の意見を表明しています。

コロナウイルスの影響で5Gの商用化は遅れるのか

このように、コロナウイルスがパンデミックを起こしている現状で、一部では5Gの利用開始に遅れが生じるのではという意見もあります。実際に、中国の広東省の工業向けインターネット事業や、江西省の病院関連事業などの5Gを活用する大規模プロジェクトは延期されました。

コロナウイルスが発生した武漢市にある光ファイバーケーブル大手2社も、本社や湯用生産施設をまだ再開していません。

アメリカの投資銀行ジェフリーズのアナリスト、エディソン・リー氏も『通信会社が光ファイバーケーブルを設置できなければ、基地局の調達を遅らせる可能性が高い』と分析しました。

しかし、他の国々より5Gの完全なる商用化を先駆けたい中国では5Gを国家の最優先事項と位置づけ、全国にネットワークと5Gを利活用したサービスを拡大することを目標に掲げています。更に、習近平国家主席は、感染拡大後の2月初旬に、5G関連投資が消費支出減少の穴埋めに役立つとも発言しているため、5Gの利用開始には予定と少々遅れが出たとしても、中国ではすでにコロナウイルス対策として5Gの活用が始まっていることから、さらなるサービスの拡大が期待できるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、中国におけるコロナウイルス対策として5Gが活用されている事例をご紹介しました。コロナウイルスの感染拡大により、医療現場や教育現場が対応に追われていたり、デマに惑わされた人たちによる紙類などの買占めであったり、多くの場所でパニックが起こっているのが現状です。

これらの対策として、中国が行った5Gなどの最新テクノロジーを利用したサービスの提供や、その提供までのスピード感は、世界各国が学ぶべき点と言えるのではないでしょうか。

実際日本では、5Gを利活用した遠隔医療やオンライン授業などのサービスは、現状展望の話であったり実証実験の段階等であり、普及には至っていません。しかし、こうした感染症の拡大時や、政府からの急な指令に対応するには、その時こそ頼れる5G通信などのインターネット環境を構築することは急務であるとも言えます。

もはや、コロナウイルス対策として5Gの利活用を進めていく中で、今後の遠隔医療や教育現場での5Gの利活用を促進させる可能性もゼロではないと言えるのではないでしょうか。