5G通信で自動運転技術はどこまで進化するのか

高速ネットワーク技術である5Gの普及によって様々なモノがインターネットがつながるということは、自動車にとっても、決して関係のない話ではありません。なぜならそれは、インターネット通信によって自動車が外部の交通インフラとつながったり、他の車とつながることは、自動運転の未来が実現されるということでもあるからです。
今までの通信では、なぜそれが出来なくて、なぜ5G通信では可能になるのか?このような疑問を、現状と今後の可能性の2つの視点から見ていきたいと思います。
Contents
現在の自動運転レベルについて
最近自動運転技術についてニュースなどでも広く取り上げられるようになり、自動運転技術自体を最新技術だと思いがちですが、実はそうではありません。
前の車との距離が近ければピピっと警告音のような音を鳴らしてブレーキをかけてくれたり、車道から少し外れると自動的に軌道修正をしてくれたりと安全に運転するための補佐をしてくれるような車に乗車したことはありませんか?
これもまさに自動運転技術なのです。自動運転技術は『自動運転化レベル』として、レベル0からレベル5の下記6段階に分類されます。
・運転自動化レベルについて
【レベル0】運転自動化なしのドライバーがすべての運転操作を行う自動車。※運転の主体はドライバー
【レベル1】自動車に搭載されたシステムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを、部分的に行うことができる。※運転の主体はドライバー
【レベル2】システムがアクセル・ブレーキ操作、ハンドル操作の両方を部分的に行うことができる。※運転の主体はドライバー
【レベル3】決められた条件下で、全ての運転操作を自動化する技術を搭載した自動車。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。※運転の主体は基本はシステムだが、システムの対応が困難な場合はドライバー
【レベル4】特定の場所では全ての運転操作を自動化する技術を搭載した自動車。※運転の主体はシステム
【レベル5】条件なしで、全ての運転操作を自動化した自動車。※運転の主体はシステム
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/resourse/data/level1.pdf
現在の自動運転技術における到達レベルとは
現在日本で発売されている自動車はレベル2までの自動車であり、レベル2までの自動車は特に『運転支援車』と呼ばれています。
運転支援車は、ドライバーの不注意を防いだり、危険を察知して警告するなど、交通事故を未然に防ぐように工夫された自動車のことで、日本で始めてこのシステムを導入した自動車は、2010年に発売されたスバルの『アイサイト』でした。
例えば前の車との距離や歩行者を感知して、衝突する危険がある場合は音や画面で表示をしたり、ドライバーが対応出来なければ自動でブレーキをかけるシステム、車線維持をしてくれるシステムが搭載されています。
更には高速道路の走行中など、一定の速度で比較的長い距離を走行する場合、前方の車に追随してドライバーがアクセルを踏まなくても、一定の距離とスピードを保ったまま走行してくれる機能もあります。
ただし、運転の責任はすべてドライバーにあり、常にハンドルを握っておかなければなりません。
自動運転普及の基盤を担う5G通信
自動運転普及において5Gが必要な理由
インテルでは、自動運転を行うには1日に4TBのデータの取得が必要であると指摘しています。
もちろん、4TBのビッグデータすべてをインターネットを利用して処理するわけではありませんが、高速で移動しながら大量の情報をやり取りするには、5G通信が必要不可欠であると言えます。
まず、リアルタイムで状況が変化する交通情報に対応するためには大量のデータを高速でやり取りをする必要がある上に、渋滞時でも各車両のネット接続が混雑してはなりません。
これらのことから、大容量かつ高速通信、同時多接続、低遅延の特徴を持った5G通信が必要となることが分かります。
5Gはなぜ自動運転技術の進化を加速させるのか
完全なる『自動運転車』の実現には、4TBのデータ取得が必要であるということを先ほどご説明しましたが、自動運転車を実現するためにはセンサー類やAi等の技術の発達が必要になるという課題が積まれています。
現在の4G回線やWi-Fiでは速度や容量の面で広範囲をネットワークで包み込むことができなかったため、現状の通信インフラ相応の自動運転技術しか世に送り出すことができませんでした。
しかし、5G通信のネットワーク容量と性能であれば、自動運転車の特性や機能を更に高めることができるであろうと予想されています。
なぜなら、5G規格は自動運転車のコネクティビティーを強化するように設計されており、超高速かつ大容量で、高速移動時におけるリアルタイムの遅延も少ないからです。
このため車外から受けた重要なデータをクラウドに効率的に伝え、車内システムでの処理能力を上回る性能を発揮できるようになります。
実際に、5Gを利用して身の回りの様々なモノがインターネットに接続されるようになることで、セキュリティ面などの理由から、防犯カメラも更に高性能になっていくと言われています。
そこで利用されるのがAiを活用した画像分析や映像分析等であり、このようなAi機能の発達も自動運転技術に関与してくるのです。
このように、5G通信の普及をきっかけとして様々なモノがインターネットに接続されるとともに、これまで別々のモノとしてみられてきた事柄や業界が一体化して周囲を進化させていくと言えます。
2030年には完全な自動運転車が実用化される?
完全なる自動運転車、レベル5の自動車の実現時期について明確な目標を掲げている国や例はまだなく、2030年ごろを目安としている場合が多いです。
日本では、2025年以降に自家用車、物流サービス、移動サービスの全てにおいてレベル4を達成・実用化した後、実証を重ねながら対象範囲を徐々に拡大していくことが想定されています。本格的な実現は2030年代になるものとされているのが現状です。
しかし、トヨタでは2020年の東京オリンピック開催時にレベル4の自動運転車を公表する企画が明らかになっており、それに続いてレベル5のコンセプトモデル発表にも期待が寄せられています。
ちなみに日本の自動運転レベル3を解禁する改正道路交通法は、2019年に国会で既に成立しています。
一方、5G通信のサービスが正式に開始された中国では、2015年に打ち出した産業政策「中国製造2025」の中で、レベル4~5の新車搭載率を2030年に10%とする目標を掲げています。政府の主導力が強いため、開発状況によっては早期実現の可能性もあるかもしれません。
同じく5G通信が開始されたアメリカもまた、2030年代のレベル5標準化を目標としています。
このように、5G通信を利活用してすべての車をコネクテッド化したあと、2030年ごろを目安に完全なる自動運転車が普及していくことが予想されます。
まとめ
スマホが登場して10年、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。身の回りのデジタル化やテクノロジーの進化は止まることなく加速していっています。5G通信もまた、様々な産業へ革命を起こすサービスであると期待されており、自動車業界もまた多大なる恩恵を受ける産業の1つです。
2018年にはトヨタが『自動車メーカーから、自動車にかかるサービス提供会社になることが目標である』と発表し、話題になりました。自動運転技術が加速すれば、もはやマイカーを持つ必要はなく、街中を走っている自動運転車に乗り込むだけで目的地へ連れて行ってくれるというような未来も近いのかもしれません。