5GとARスマートグラス活用の遠隔作業支援システム「AceReal for docomo」とは

今年3月末から各携帯キャリアより5G通信のサービスが開始されたわけですが、5Gの恩恵を受けるのはスマホやタブレットなどを利用するときだけではありません。
5Gは超高速、大容量かつ低遅延などの特徴を持つことから、様々な分野での活用が期待されています。要は、個人向けのスマホでの活用のみならず、法人企業において、遠隔作業を可能にしたり、業務効率化につながるなどの効果がもたらされると注目されているわけです。
そんな法人企業への5G活用にいち早く目を向けたのはドコモです。今回はドコモが提供する5GとARスマートグラスを活用して遠隔作業の支援システムについて解説してまいります。
Contents
『AceReal For docomo』は5GとARの技術を活用
そもそも『AceReal For docomo』とは、NTTドコモとサン電子が共同で2020年7月13日に法人顧客向けで提供を開始した、ARスマートグラスと5Gネットワークを用いてリモート環境から現場に的確な指示をだせる遠隔作業支援ソリューションです。
特に昨今では新型コロナウイルスの影響で多くの企業が県外への出張を取りやめにしたり、リモートワークを取り入れているかと思いますが、そのような企業でも大いに活躍することでしょう。
ARスマートグラスとは
ただ、AceReal For docomoについて詳しく解説をするには、まず『ARスマートグラス』についての解説が必要です。ARとはデジタル情報がまるで現実世界にあるように表示される技術のことで、スマートグラスとはハードウェアとインターネット接続を組み合わせることで、現実空間に情報を重ねるというものです。
したがって、ARスマートグラスとは、現実空間にデジタル情報を表示させることができるものであると考えていただいて問題ありません。まさに人気のゲームアプリ『ポケモンGO』のようなものであるとお考え下さい。
AceReal For docomoとは
そして、AceReal For docomoとは、ARスマートグラス、業務支援アプリケーション、サポートサービス、「クラウドダイレクト」がセットになったソリューションで遠隔からの現場作業を支援することができるシステムです。
現場作業者がARスマートグラスを装着すると、現場作業者の見ている映像や音声を遠隔支援者にリアルタイムに伝送することができ、熟練者や管理者(支援者)が現場の状況にあわせて適宜、指示を送ったりアドバイスすることが可能になります。
更には、ドコモのネットワーク内に設置したクラウド基盤『ドコモオープンイノベーションクラウド』上にある業務支援アプリケーションAceReal Appsを活用することで、支援者は現場作業者が必要とするマニュアルや、作業指示を書いた現場画像等をARスマートグラス上に表示させることもできます。
尤も、遠隔操作においては現在の4G回線、およびWi-Fi環境ではリアルタイムとの遅れが生じるため、難しいとされてきました。しかし、このAceReal For docomoではドコモの5Gサービスを活用することができるため、遠隔からでも問題なく操作ができるようになるというわけです。
『AceReal For docomo』の機能・特徴
AceReal For docomo では、現場作業員が装着したARスマートグラスと、支援者側のPCで映像と音声をリアルタイムに中継します。支援者はPCからマニュアルや画像などをARスマートグラスに表示することができ、クラウドダイレクトを利用することで遅延なくリアルタイムに配信することができます。
『AceReal For docomo』の特徴
業務支援アプリケーションAceReal Appsの主な機能は以下の通りです。
ビデオ通話
マニュアル表示
チェックリスト機能
支援者側からのファイル送信
作業映像の録画、再生
現場画像の加工編集など
これらの機能をARスマートグラスを通して利用することで遠隔への共有や遠隔作業などが可能になります。
また、下記のような充実したサービスもドコモならではの特徴です。
- ワンストップ提供
スマートグラス・アプリ・5Gをまとめてお届け。 - 届いたらすぐ使える
初期設定もドコモにお任せ - 長時間利用も安心
モバイルバッテリーもセットで付いてくる。 - 遠隔地からの支援も円滑に
5Gで現場の映像・音声が低遅延で届く。
『AceReal For docomo』で解決できること
また、AceReal For docomoで解決できることは、
①コスト削減
②技術継承の効率化
③労働者定着率の向上
④働き方改革の促進
などです。
①コスト削減
そもそも、5Gを利用することで遠隔からの作業がストレスなく行うことができるようになりますので、現場へ移動する必要がなくなります。移動がなくなれば、交通費や宿泊費、出張手当などの人件費を削減することができるでしょう。
②技術継承の効率化
また、近年では専門的な技術の知識を持った人材、技術者が減ってきているといわれています。特に優秀な技術者をこれから育てようと思っても教育には時間もコストも必要になってくるのです。
その点、全国のベテラン技術者があちこちの教育対象者にARスマートグラスを活用して技術を継承していくことができるようになることで、有効的に時間を活用することができるようになり、結果的に技術継承の効率化につながるといえます。
③労働者定着率の向上
それだけでなく、教育者が現場におらず、地方の支社や企業にとって十分な教育を受けられないというのは社員の不安や、不安からの退社にもつながりかねません。しかし、遠隔からでもそばにいるように教育をすることができるようになることで、若手社員も安心できる労働環境を提供することができるでしょう。
④働き方改革の促進
更には、近年、働き方改革に関するトピックスをよく見かけるようになりました。働き方改革とは簡単に言いますと、『いろいろな働き方を選択できるように対応するための改革』です。日本が直面している『少子高齢化問題』やそれに伴う『労働力不足』などへの対策として打ち出されたもので、女性も高齢者も誰もが働きやすい環境を構築したり、生産性を向上することを目的としています。
特に最近に至っては、コロナウイルスの感染拡大の影響によりリモートワークを取り入れた企業は日本の中小企業のうち約70%の企業であったというデータもありました。
このように、自宅での勤務、リモートでの勤務などにおいてもARスマートグラスを活用することで柔軟に対応することができるようになるでしょう。
『AceReal Foe docomo』の活用シーン
では最後に『AceReal for docomo』の活用はどのような場面が考えられるのかという点について考察していきます。
上記の解説で、主に下記のような機能が使えると申し上げました。
ビデオ通話
マニュアル表示
チェックリスト機能
支援者側からのファイル送信
作業映像の録画、再生
現場画像の加工編集など
例えば、技術の継承が必要な製造業において、マニュアルをみせながらビデオ通話を行ったり、作業映像の録画をしたりすることで、教育対象者に専門的な技術の教え込みを行うことができるようになります。録画などをしておけば、仮に技術者が退社したとしても、その後教育対象者は録画の映像をみて、ARスマートグラスを活用したときに教えてもらったように作業をすることができます。
また、医療系や、その他技術職なども、遠隔での作業ができるため、地方に優秀な人材を増やすために利活用することができるでしょう。
その他、リモートワークを取り入れた企業などでも活用できます。
まとめ
本記事では、NTTドコモととサン電子が共同で提供を開始した、『AceReal for docomo』について詳しく解説いたしました。これまで、移動通信技術とはモバイル通信にかぎって利用されてきましたが、5Gでは、多くの産業で、多くの場面で、利用されていくことになります。
そして、5Gを利用することで人と人との距離はネットワークを通して近くなっていく世の中に変わっていくことでしょう。コロナ禍でなかなか人と会えない、そしてリモートワークを余儀なくされたなど、人とのかかわりが希薄になっていっているようにも感じられますが、5Gなどの遠隔技術を利用することで、もっと人との距離を縮められるようになるかもしれません。
ビジネスでの遠隔作業技術はこうしてメジャーになってきているのですから、今後は日常生活でも簡単にARスマートグラスや5Gを活用した遠隔作業技術などを利用するようになっていくことでしょう。