ドコモの5Gが更に高速に!?高速化のプロセスについて徹底解説!

11月5日、NTTドコモの新サービス・新商品発表会が開催されました。その場において、ドコモは「瞬速5G」というキャッチフレーズを発表しました。さらに2023年3月末までには、人口カバー率約70%を目指すとも発表しています。
次世代通信規格である5Gは、ただでさえ高速通信が特徴です。しかしドコモの5Gは、さらなる高速化を前提に打ち出しています。ドコモはどのようなプロセスで、さらなる高速化を狙っていくのでしょうか。今回はドコモ5G高速化のプロセスや、今後のビジョンについて見ていきたいと思います。
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ドコモ、Sub6も4.2Gbpsへ高速化
日本の5G向け周波数には、「Sub6(3.7GHz帯と4.5GHz帯)」と「ミリ波(28GHz帯)」が使われています。ドコモは5G展開において、5G専用のSub6とミリ波を使用します。5G用の周波数で、5Gの性能をフルに発揮できるサービス「瞬速5G」で全国にエリア展開すると発表しました。
Sub6とミリ波を比べると、Sub6は比較的低い周波数帯となっています。ドコモでは広い帯域を確保できるミリ波を使って、受信最大4.1Gbpsを実現していました。しかし今回の高速化によって、Sub6でも受信最大4.2Gbpsへ高速化し、ミリ波を超える通信速度を達成しました。
Sub6とは
Sub6は、6GHz未満の比較的低い周波数帯です。実質的には4G周波数の延長として利用でき、広いエリアをカバーするのに向いています。そのため現在の国内メーカーのスマホでは、Sub6が主流となっています。
日本国内ではSub6に「4.5GHz帯」と「3.7GHz帯」が割り当てられています。ドコモのSub6は、3.6~3.7GHzおよび4.5~4.6GHzの合計200MHzが割り当てられています。
5G通信の場合、Sub6の方が低周波数なので、広い範囲での通信が可能です。障害物などの影響を受けにくいので、広範囲での5G通信に適しているでしょう。
ミリ波とは
ミリ波は、30GHz~300GHz帯を指す周波数です。日本で5Gに使用される28GHz帯も、ミリ波に含まれます。Sub6に比べると周波数が高いですが、電波が直進しやすく、障害物などに弱くなるという特徴があります。
雨や待機中の水蒸気に影響を受けて減衰しやすいので、広いエリアのカバーにはあまり向いていません。その代わりに、広大な帯域幅を確保できるというメリットがあります。
帯域幅は広ければ広いほど、通信容量を確保できます。そのためミリ波は、都心部などの混雑エリアをカバーする用途に向いているでしょう。
ミリ波対応エリアも公開中!
これまでドコモは、5G対応エリアに関して、公式Webサイトで施設名一覧を表示していました。しかし10月より、5Gサービスエリアマップを公開しました。前月までに対応したエリアは緑色、2か月後に対応するエリアはオレンジ色、4か月後以降に対応予定のエリアが赤色で表示されています。2021年3月末、同年夏までに拡大予定のエリアも示されています。
マップでは、ミリ波を利用できるスポットも「m」マークで表示されています。現在の5G対応エリア、これから拡充する予定のエリアを知りたい人は、ぜひ確認しておきましょう。
NTTドコモ サービスエリアマップ
現在の5Gは速くないの?
ドコモが5G通信の高速化を打ち出したということは、現在の5G通信は速くないのでしょうか。現在、4G用の周波数を5Gに転用するか否かで、大手通信キャリアの戦略に違いが出ています。現状の5Gと、今後の5Gがもたらすメリットについて、見ていきましょう。
現状の5Gについて
日本で5Gサービスがスタートした当初、5Gは新規に割り当てられたSub6とミリ波でのみエリア構築が認められていました。しかし後に、4G用の周波数を5gに転用できる整備が完了しました。そのためKDDI(au)やソフトバンクでは、4G周波数を5Gに転用することに積極的な姿勢を示しています。
KDDIとソフトバンクは、22年3月までに約1万の既存基地局を5G対応にする計画を打ち出しました。最終的には全国で2~3万の基地局を5Gに転用する予定となっています。
その一方で、ドコモは4G周波数による5G展開に慎重な姿勢を見せています。なぜなら4G周波数は、5Gに切り替えても通信の大幅な高速化が難しいと指摘されているからです。ピクト表示こそ5Gになりますが、実際の通信速度は4Gと大差ありません。
そのためドコモでは、専用周波数を用いた高速な5Gの基地局整備に注力すると協調しているのです。
今後の5Gがもたらすメリット
ドコモでは、4Gのとは別のネットワークを構築する「スタンドアローン(SA)」方式を2021年中に導入すると発表しています。ネットワーク全体の低遅延を実現するために、コアネットワーク装置「5G-Core」による「ネットワークスライシング」技術が導入される予定です。
ネットワークスライシングとは?
「ネットワークスライシング」は、要件に応じて仮想的に分割したネットワークを使い分ける技術です。低遅延が必要なコンテンツでは、一度に送るデータを細かく分けて送受信が可能です。
大容量が必要なものでは、一度のデータを大きくするなど帯域をコントロールできます。同技術の活用は、5Gの特徴をより柔軟に、アプリやサービスに提供できるようになるでしょう。
さらに5Gのユースケースとなる映像体験も、積極的に提供する予定となっています。
例)
・マルチストリーミング … スポーツのマルチアングル観戦を実現する
・360°映像 … 新感覚のライブ体験を実現・体感できる
など
ダイドー自販機に5G基地局を設置
ドコモは日本の清涼飲料メーカーとして有名な、ダイドードリンコとの連携も発表しました。ダイドーの自動販売機を活用して、5G基地局の構築を進める計画となっています。
関西地域の都市部において、自販機の上部に3.7GHz帯の5Gアンテナを数台設置し、2020年中に試験運用が開始されます。なお本格的な展開は、2022年頃になると予定されています。将来的には、関西以外の地域でも同様の展開が行われていくでしょう。
さらにドコモはガラスアンテナ型、マンホール型、電話ボックス型など、既存の施設を利用した基地局の構築を進めています。街の景観を損なわせないように、5Gエリアの拡大を後押ししています。今後は街路灯を活用した基地局構築も検討しているとのことです。
まとめ
今回はドコモが発表した5Gの高速化について解説しました。
ただでさえ超高速と言われる5Gですが、基地局整備などの関係で普及が遅れているのが現状です。4G周波数を5G用に転用した活用方法も注目されていますが、実測が4Gと大差ないのではという、懸念の声も上がっています。そのためドコモでは、あくまで5G周波数を利用した5G環境整備を宣言しています。
ドコモでは低周波数のSub6を、受信最大4.2Gbpsの高速化に成功しました。ダイドーと連携することで、自販機など既存のインフラを利用した基地局整備も予定されています。
KDDIやソフトバンクとは異なり、独自の路線を強調するドコモの5G戦略。今後も5G環境整備の分野で、ドコモの動向からは目が離せません。