ローカル5Gのインフラとしてケーブルテレビが注目されている理由とは

2020年、いよいよ日本国内でも次世代通信規格「5G」の実用化が目前に迫っています。5G実用化への取り組みが本格化する中、ケーブルテレビがローカル5Gのインフラとして注目されているのをご存知でしょうか。

大手通信キャリアが全国で提供する5Gサービスとは異なり、企業や自治体が建物や敷地内などで独自に5Gを活用できる制度を「ローカル5G」と呼びます。ケーブルテレビ網とローカル5Gを組み合わせることにより、充実した地域サービスやコンテンツサービスなどを展開できるようになるでしょう。これを新しいビジネスチャンスと捉える向きもあり、2019年には大手商社の住友商事を中心に、総務省との実証実験も行われました。全国のケーブルテレビ網を活用したローカル5Gプロジェクトは、今後さらに加速していくかと思われます。

ケーブルテレビとローカル5Gの組み合わせは、地方創生などの観点から見てもメリットがあると考えられています。そこで、今回はなぜローカル5Gのインフラにケーブルテレビが注目されているのか、解説していきます。

ケーブルテレビのインフラを用いたローカル5Gの実証実験

2019年6月、ケーブルテレビのインフラを利用したローカル5Gの実証試験が行われました。実証実験の概要や、結果について見ていきましょう。 

実証実験の概要

2019年6月、大手商社の住友商事は総務省より5Gの実験試験局免許を取得しました。住友商事グループ、ジュピターテレコム(JCOM)、各地のケーブルテレビなどが連携して、国内初のローカル5Gを活用した屋内外実証実験が実施されました。さらに同年7月にはジェイコム東京において、メディア・関係者向け見学会が開催され、ローカル5Gを利用した4K/8Kの超高精細映像の映像伝送、通信距離の変動による影響計測のデモンストレーションなどが行われました。 

この実証実験では、総務省が割り当てる予定の周波数(28GHz)が使用され、距離、障害物、気象状況などが無線通信に及ぼす影響を実際の市街地空間で検証。またケーブルテレビの既存インフラとローカル5Gシステムを組み合わせ、4K/8Kの無線通信伝送も実施。その結果、有線と比べても遜色のない伝送が確認されました。 

こうした実証実験や検証を重ねながら、各企業や自治体はローカル5G+ケーブルテレビの実用化に向けた開発を加速させています。商用化に向けた基礎的な運用課題も確認し、2019年12月にはケーブルテレビ6社が地方総合通信基盤局に免許申請を提出しています。早ければ2020年の前半には、商用サービスが開始できる見通しであるとも発表されています。 

既存のインフラがミリ波をカバー

住友商事では関係事業者16社を取りまとめ、2019年6月~8月の間に、ローカル5Gとして割り当てられる周波数帯域「ミリ波帯」の電波特性検証も行われました。

 現在総務省が用意した5G用周波数帯には「センチ波」の3.7GHz帯、4.5GHz帯、「ミリ波」の28GHz帯があります。ミリ波帯の電波特性検証では以下のような品質に影響を及ぼす事柄が、約300項目に渡り調査されました。

・窓ガラスの透過
・降雨・降雪影響
・通信距離の変化 など

 その結果ミリ波は遮蔽物に影響を受けやすく、反射しやすいなどの特性があり、放送・通信サービスの品質に与える影響が測定されました。ミリ波は電波の直進性が強く、建物のコンクリート壁ではね返されやすいので、大手通信キャリアなどでは敬遠されがちです。 

しかしケーブルテレビの既存のインフラを活用することで、ミリ波の欠点がカバーできるようになります。総務省でも先行してミリ波の周波数を使用したローカル5Gの制度を整備しています。2019年12月14日からローカル5Gの免許申請が開始されているので、導入を検討している人は早めに準備を進めておきましょう。 

各企業のローカル5G構築においてケーブルテレビが注目される理由

5Gはその特長として、超高速・超体遅延・多数接続などを掲げています。具体的には高精細な映像伝送や、複数のカメラ・センサーを活用した自動運転などが実現できると期待されていますね。「ローカル5G」とは、5Gの技術を企業や自治体が利用できるようにした自営システムです。 

大手通信キャリアの5Gサービスとは異なり、利用できるエリアは限られています。しかしスマートファクトリーや自律施工/遠隔施工、サプライチェーンマネジメントなど、企業や自治体のニーズにマッチした形でさまざまな仕組みが構築できるでしょう。地域経済に密着したケーブルテレビとローカル5Gを組み合わせることで、多くのメリットが発生します。

ケーブルテレビは全国の52%以上にサービスを展開

ケーブルテレビは全国52%以上となる約3千万世帯にサービスを提供しています。放送サービスはもちろんインターネット接続サービスも提供しており、今や重要な社会インフラの一つと言っても過言ではありません。国内で50%を超えるケーブルテレビは光回線化も進んでおり、大容量・双方向の地域通信インフラも大半が構築されています。

そのためローカル5Gのインフラとして、ケーブルテレビが注目されています。一方でローカル5Gの普及には、コアネットワークの構築、基地局整備、それらの投資負担といった課題が挙げられています。

 課題を解決する「グレープ・ワン」

2019年12月24日、ローカル5Gの活用を目的とした新会社「グレープ・ワン」が設立されました。住友商事、インターネットイニシアティブ(IIJ)、秋田、栃木、東京、三重、愛媛のケーブルテレビ5社、地域ワイヤレスジャパンの8社と共同出資により設立されています。

 グレープ・ワンはそれぞれが持つノウハウを最大限活用し、ケーブルテレビ事業者の設備投資や運用面の負担を軽減させる方針です。またローカル5Gを活用した地域課題の解決、地域創生への貢献にも取り組むとされています。 

ネットワークサービス高度化に向けた取り組みを実施している

多くのケーブルテレビ事業者は、地域に密着したコミュニティチャンネルを持っています。他にもIP電話、インターネット接続、無線といった幅広いサービスを展開していますよね。特に近年では無線LANの利用促進を含んだネットワークサービスの高度化に向けた取り組みが、全国的に見られています。こうした面でもケーブルテレビはローカル5Gのインフラとして注目を集めています。

 一方で年々高度化するネットワークに関する技術検討は、ケーブルテレビ事業者にとって大きな課題であると言えるでしょう。前述のグレープ・ワンは無線コアネットワークの構築・提供、回線サービスの提供、基地局や端末の設備の選定、運用、保守に至るまで幅広くサポートする姿勢を示しています。このようなことから、ローカル5Gとケーブルテレビを組み合わせることは、双方にとってメリットがあると言えるのです。

 

ケーブルテレビによるローカル5Gの強み

ローカル5Gとは名前に「ローカル」がつくように、地域限定・施設限定のサービスとなります。ローカル5Gと通常の5Gの違いについては下記の記事で詳しくご説明しておりますのでご覧ください。

ローカル5Gとは?「普通の5G」と何が違う?

ケーブルテレビによるローカル5Gは、大手通信キャリアによる全国5Gと比較すると、地方創成の観点からもメリットがあります。既存のケーブルテレビ網とローカル5Gを組み合わせることで、さまざまな地域サービスやコンテンツを展開できるようになるでしょう。

ローカル5Gは地域の課題解決、活性化が目的とされた制度です。そうした観点から考えても、地域に密着したケーブルテレビ事業者こそ役割に適していると言えます。

 また多くのケーブルテレビ事業者は、ローカル5Gの用途として「FWA(固定無線アクセス)サービス」を想定しています。いわゆる「ラストワンマイル(通信事業者と利用者を結ぶ最後の区間)」を有線から5Gに置き換えることで、引き込み工事が不要になります。

 有線では解約時にも撤去工事が発生し、それぞれ費用が発生してしまいます。それらのコストをカットしつつ、スピーディな導入が可能となるでしょう。これらのコストカットが実現すれば、ケーブルテレビ利用料に還元できる可能性も高いと想定されています。ローカル5Gとケーブルテレビの組み合わせは、双方だけではなく利用者にもメリットがあると言えますね。

 

まとめ

今回はケーブルテレビがローカル5Gインフラとして注目されている理由について解説しました。ローカル5Gは、多様なニーズに応じて企業や自治体が独自に利用可能な5Gサービスです。地域密着メディアであるケーブルテレビ事業者は、ローカル5Gインフラとして注目されると共に、5Gを用いた地域創成という観点からも期待を集めています。

 総務省は2020年中にローカル5Gで使用できる電波の周波数を拡大し、より多くの企業が幅広い用途に利用できるようにする考えを示しました。5Gはこれからの成長が約束されている、次世代通信テクノロジーと言えるでしょう。