そもそも5Gとはいったい何?5Gの基礎知識とメリットデメリットを解説

今年の3月に国内のモバイルキャリア3社が一斉に5G通信の利用を開始したことで、一般の人々にも5Gがだんだんと親しみやすい言葉になってきました。未だキャリアの5Gは利用できるエリアがそれぞれ限られているため、快適に利用できるとまではいきませんが、『5G』とはどのようなモノなのだろうか、4Gと比べてどのくらい通信速度が速くなるのだろうかと興味を持っている方も少なくないでしょう。

ただ、5G、5Gと注目されておりながら実際、『5G』がどのようなもので、利用するメリットはどのようなことがあげられるのか、いまいちわからないという方も多いはずです。

そこで本記事では5Gの基礎知識と、5Gを利用するメリットやデメリットをまとめてご紹介します。

5Gとは『第五世代移動通信システム』のこと

5Gとは、『5th Generation』の略で4Gの次の通信規格、『第五世代移動通信システム』のことです。言わずもがな、4Gは『第4世代移動通信システム』『4th Generation』を指します。

5Gに至るまで1980年代の1Gから約10年ごとに新しい通信システムが登場してきました。

5Gの種類

5Gには大きく分けて2つの種類があります。

1つは、キャリアが一般利用者向けに提供する

①モバイルキャリアの5G

2つ目は、総務省が企業向けに提供する

②ローカル5G

です。

キャリアの5Gももっと細かく分けると、6GHz未満の比較的低い周波数帯であるSub6と、30GHz〜300GHz帯であるミリ波の2種類に分けられます。

Sub6は実質4G周波数の延長として利用でき、エリアを広くカバーするのに適しています。一方ミリ波はSub 6に比べて周波数が高いので電波は周波数が高いほど直進しやすく、障害物の影に回り込む性質が弱くなります。また、大気中の水蒸気や降雨で減衰しやすく、広いエリアをカバーする用途には向きません。

また、ローカル5Gは企業や地域単位で総務省から免許を取得することでキャリアの5G同様の性質を持った通信環境を整えることができるものです。

ローカル5Gとは?「普通の5G」と何が違う?

5Gが登場するまでの歴史

【1G】1980年代~1990年

最初の携帯電話は、日本、アメリカ、欧州の地域別に技術開発が進められ、アナログ無線技術の地域別仕様が策定されて商用化となり、この時の『アナログ無線技術のモバイルネットワーク』が第1世代移動通信システム1Gです。

【2G】1999年~

メールをはじめとする携帯データ通信の利用が本格化した1990年代にはデジタル無線の利用を可能にした第二世代移動通信システム2Gが登場しました。

これにより、各種の情報提供やインターネットメールを携帯電話で使えるようになり、携帯データ通信の利用が一気に広がることになったのです。

【3G】2000年~

1Gや2Gは地域ごとに別々の技術で商用サービスが始まったため、当時の携帯電話は特定の地域でしか利用ができず、一台の携帯電話を持ち歩いて世界中で通信を利用することはできませんでした。こうした問題を解決するために国際連合専門機関であるITU(国際電気通信連合)が標準化を進めたのが3Gです。

いわゆる3Gは初めての国際標準となった通信規格ということです。また、1Gや2Gと比べて継続的かつ急激な高速化が実現されたこともまた3Gの大きな躍進であり特徴であるといえるでしょう。現在でも、山や海の付近に行きますと携帯の電波が3Gに切り替わることがあるはずです。

【4G】2012年~

そして2010年代からは急激にスマートフォンの普及が始まりました。いわゆるガラケーの時に利用していた3Gなどの通信規格では容量が足りなくなってしまったということで、4Gの位置づけとしては『スマートフォンのための通信回線』といったところでしょう。

一方肝心の5Gがどのような位置づけになるかといいますと、『2020年以降のスマート化の第一人者』であり、世の中のIoT化、Aiの利用など、スマホでの利用のみならず様々な分野での活用が期待されています。

次項からは5Gが持つ特徴やこれまで利用していた4Gとはどういった違いがあるのかという点について見ていきたいと思います。

5Gが持つ3つの特徴

5Gが持つ特徴はこれまでのコラムでも何度かお伝えしてきたので、まとめ程度で解説しますが、下記の3点があります。

①高速・大容量の通信ができる
②同時に多数のデバイスをインターネットに接続できる
③リアルタイムとの誤差がほぼ無い

これらをそれぞれ、①高速・大容量、②同時多接続、③低遅延、などとアナウンスされており、スマートフォンのみならずインターネットに接続可能な様々なデバイスでの利用が可能です。

スマホ以外での利用シーンは下記の2つの記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。

5Gが何を変える?農業から金融、工事現場までが変わる21の業界とは【前半10業界】

5Gが何を変える?医療からゲーム、最新Ai産業までが変わる21の業界とは【後半11業界】

5Gと4Gの違い

スマートフォンの世帯普及率は今や80%を超えているといわれておりますが、基本的にスマホで利用している通信規格は現在『4G』です。

では、4Gと5Gの違いは具体的にどのような事項があげられるのか下記にご紹介していきます。

4G 5G
通信速度 最大1Gbps 最大20Gbps
同時接続数 10万台/平方km 100万台/平方km
遅延速度 10ms 1ms

①各段に通信速度が速くなる

まず5Gと4Gの大きな違いとしてあげられるのは、通信速度の飛躍的な向上です。4Gの通信速度は現在100Mbps~1Gbps程度ですが、5Gでは実効速度が10Gbps、理論値の最大速度は何と100Gbpsにまでなるといわれており、約100倍の通信速度が実現できるとされています。

通信速度の向上により、データのダウンロードや動画、サイトコンテンツの表示が各段に早くなることが期待できるでしょう。ちなみに、1時間の映画をダウンロードするのに30分かかっていたところが、わずか3秒でダウンロードが完了したという実験例もあるようです。

②常にインターネットにつながった状態になる

また、前述の特徴の部分で申し上げたように、5Gは同時に多数のデバイスをインターネットにつないでも通信速度が遅くなったり、利用できなくなったりすることがないとされています。同時接続数は4Gの約10倍で、たくさんの人が集まる場所や、オフィスなどで多数のデバイスをネットにつなげなければならない場合なども通信が混雑して利用できなくなる可能性が低くなるといえます。

特に近年ではスマホだけでなく家電などもインターネットにつなげる『IoT製品』が多く普及してきているところです。こうしたIoT製品の利用においても4Gではリソース不足で実現できなかった最新のシステムなども搭載できるようになるでしょう。

③遅延がなくなり通信環境が向上する

5Gではリアルタイムとの遅延がほぼ0になるとアナウンスされています。例えば、現在SNSなどで芸能人のリアルタイム配信などを見ていても、コメントが届くのが遅かったり、対談もスムーズにいっていなかったりなどといった場面に出くわしたことがあるという方も少なくないでしょう。

このデータ遅延は現在の4Gの約10分の1程度に抑えられ、データ送受信の遅延が少なくなることで5Gではよりリアルタイムな操作が可能になります。

5Gに変わるメリット

通信速度が速くなるだけ、遅延がなくなるだけ、あまり動画なども見ないし4Gのままでも大丈夫かな、、そう感じている方もいらっしゃるかもしれません。では、5Gに変わるメリットとはどのような事項があげられるのか、本章で解説していきます。

・通信に関するストレスがなくなる

まずは、通信速度がこれまでよりも格段に速くなることで、通信に関するストレスがなくなるといったことがメリットとしてあげられます。というのも、現在では以前よりもインターネットでYouTubeをはじめとする動画サイトやネットフィリックスなどの動画配信サービスを利用する人が増えてきました。モバイルキャリアも5G通信の商用化に伴い、動画サービスの向上を狙った新サービスも同時に開始しています。

通常、動画を視聴するにはリロード時間が必要であったり、高画質の動画を視聴すると何度か通信が止まったりすることもあるものの、5Gでは動画を快適に利用することができるようになります。

また、動画だけでなくアプリやゲームなどンおダウンロード時も同様で、インターネットを介した通信全般が快適になるといえるでしょう。

・通信コストが削減できる

通信が大容量化することにより、通信トラフィックの増大に伴う遅延やネットワークの障害に幅広く対応することができるようになります。一度に接続できる台数が増える分、中継器などの設置もいらなくなりますので、コストの削減につながるというメリットもあります。

・IoT製品が普及する

前述にも申し上げたように、5Gの利用が一般的になるとあらゆるモノをインターネットへ繋げるIoT機器が、より普及することが見込まれます。

IoTは温度や湿度の管理、Webカメラ操作、家電制御など、さまざまな分野で応用されます。ビニールハウス(農業)や工場・店舗・病院・学校など、あらゆる場所で得られるデータがネットワークを介して監視・制御することが可能となり、これが『5Gはあらゆる分野に革新をもたらす』といわれている理由の一つです。

・遠隔操作で過疎地域の支援

特に、現在は過疎地に行くと4Gはもとより3Gもつながりにくく圏外になってしまうといった経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、4Gの普及率は90%を超えておりますが、いまだそういった地域があるのも事実です。

地方創生においてローカル5Gに期待される活躍ぶりとは

その点、5Gのリアルタイムとの遅延がなくなるといった特徴を生かして遠隔操作ができるようになることから、過疎地域への医療面や交通面での支援ができるとされています。そのようなことから、ソフトバンクとKDDIは『5gJapan』という合弁会社を立ち上げ、田舎への5Gの早期普及に取り組んでいるところでもあります。

KDDIとソフトバンクが合弁会社を設立!5Gエリアの拡大は今後どうなる?

・リモートワークの促進で働き方改革ができる

働き方改革とは、数年前から政府が声明してきた従業員の健康の保持や、柔軟な働き方を促進するための施策です。働き方改革といっても、長年蓄積された経営方針や、雇用条件などはどうしても今すぐに、そして突然変更できるわけもなく、あまり実行されてこなかったのが現状でした。

しかし、2020年3月ごろから世界中で大流行した新型コロナウイルスにより、リモートワークや在宅ワークが一気に広がることとなり、人々は通信回線への恩恵をさらに感じることとなったのです。そうはいっても、現在の自宅用Wi-Fiや4G回線ではオンライン会議中に通信が途切れてしまったり、止まってしまったりといったハプニングが起こってしまったケースもあったでしょう。

しかし、5Gを利用することで、さらに通信回線を利用したリモートワークや在宅ワークなど様々な働き方が認められるようになり、結果的に働き方改革につながるといったことも予想できます。

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5Gに変わるデメリット

とはいえ5Gに変わるデメリットももちろんあります。

それはより多くのデバイスがインターネットにつながれることにより、サイバー攻撃のターゲットが増えること、そしてトラフィック量が増えることで、窃取対象となる情報量も増える可能性があるということです。

しかしながらこうしたセキュリティ問題については5Gを利用した高セキュリティシステムやAi技術を搭載したサイバーセキュリティシステムなどを利用することで徐々にブラッシュアップされていくことでしょう。

まとめ

本記事では5Gについての基礎知識、および4Gから5Gに変わることによるメリットやデメリットについて解説いたしました。4Gがスマホでの通信が快適になるようにと登場した通信回線であるとすれば、5Gはもっと利用用途が広く、様々な業界のシステムを進化させるものであるといっても過言ではありません。

現状5Gが利用できる場所は一定のエリアにとどまっていますが、今後2030年までには国内のほぼ全域を5G通信がカバ―すると期待されています。ローカル5Gを申請する企業なども増えてくるでしょう。

一般利用者も企業の経営者等も5Gを利用するときのために5Gに関する基礎知識を今のうちから蓄えておいてみてください。