5Gがスーパーシティの実現を加速させる?

2020年3月末、日本での5G提供が開始され、社会は大きくデジタルシフトしていくでしょう。2030年の5G市場は5G特需が見込まれており、経済効果は約7兆円。2040年には5Gは社会を支える基盤になるとされています。
今回は、Aiやビッグデータを活用した最先端都市「スーパーシティ」を目指すために可決された法案、通称「スーパーシティ法」について解説。5Gの登場とスーパーシティ法の可決によって、私たちの生活にどんな変化がもたらされるのか見ていきましょう。
Contents
スーパーシティ法案とは
2020年5月27日、スーパーシティの実現を目指した国家戦略特区法の改正案、いわゆる「スーパーシティ法」が可決。もともと国家戦略特区法では、世界で一番ビジネスがしやすい環境を作るために、規制緩和や税制の優遇を行うことでスマートシティを構想する規制改革制度でした。
しかし、日本では地方ごとに人口減少や少子高齢化など異なる問題を抱えており、自治体単位での問題解決が必須。そこでスーパーシティ法案では、より迅速・柔軟に地域独自で特例を設定できる法制度の整備を検討しています。
スーパーシティ法案の内容
すでに世界では「スマートシティ」として、交通量や自然災害の問題を、テクノロジーを活用して解決する街づくりが活発化しています。
日本が構想するスーパーシティ法案は、これまでの未来都市として目指されていた技術者や企業目線のハイテク都市ではなく、地域住民が感じる課題をテクノロジーと大胆な規制緩和によって解決しようという考え。地域課題としてあげられる空き家問題や、インバウンド問題、労働人口の減少問題など、複数の問題をまるごと解決する街づくりを目標に、世界のスマートシティを上回るスーパーシティを目指しています。
・スーパーシティ法案で変わること
スーパーシティ法案の可決によって、複数分野のデジタル化が一気に進み「2030年の暮らし」を先取りできるかもしれません。スーパーシティ法案の実現は、私たちの生活をどのように変えるのでしょうか。こちらでは政府が想定している生活領域に合わせて、未来の暮らしをチェックしてみましょう。
①移動
自動運転技術が進化し、自動車間調整や危険予測機能によって事故が激減するでしょう。車1台ごとの目的地が分かれば、渋滞予測も調査でき、渋滞緩和も見込めます。さらに「スマート駐車」と呼ばれる駐車場の空き状況をドライバーに伝えるシステムで、CO2削減やドライバーのストレス軽減が行なえるでしょう。
②物流
物流業界の人手不足が叫ばれる現代では、無人配送が進むのは当たり前かもしれません。物流量の増加に伴い、今後はドローンによる遠隔配送の割合が増えていくでしょう。
③支払い
完全キャッシュレス化がすすみ、家庭の出費も視覚化できるでしょう。無人レジが増加することで雇用改善にも繋がります。
完全キャッシュレス化がすすめば、スマートフォン内で全ての出費を把握可能。何にいくら使ったかがすぐに分かるので、家計簿をつける必要もありません。
無人レジが増加することで、非対面非接触で会計が出来るため、消費者にとって便利です。店舗側にとっても作業効率の改善に繋がる可能性があり、双方にメリットがあるでしょう。
④行政
何度も足を運び、時間もかかる行政手続き。仕事や家庭の事情によってはなかなか手続きに行けないこともありますよね。スーパーシティ実現後には、スマホからネットで手軽に申請。時間にも場所にもとららわれることなく、手続きが進められます。
⑤医療・介護
在宅診療が行なえるため、体の不調を感じたらすぐに診察が受けられます。通院履歴もデータ管理されるため、薬や既病歴も簡単に知ることが出来ます。さらにロボット医療が進化することで遠隔手術が行えるでしょう。
⑥教育
学校に登校して授業を受けるのが当たり前の現在ですが、スーパーシティ実現後には、遠隔授業で自宅にいながら授業が受けられます。さらに一人ひとりに合った教材や課題を管理し、質の高い教育を目指します。
⑦エネルギー・水
Co2排出量やエネルギー使用量を管理し環境改善を目指します。家庭の電気やガスの使用状況を把握し、コスト削減を支援。水道管の老朽化等による破損を感知し、漏水時間の短縮が行えます。さらに点検員や作業員を削減することが出来るでしょう。
⑧環境・ゴミ
いつでもゴミ出しが出来るようになり、ゴミが満杯になる前に無人ゴミ収集車へ通知が行くため、ゴミ収集効率化が行なえます。さらにゴミの種類をAiが感知して分別するため、環境にやさしいテクノロジー活用が見込めます。
⑨防犯
監視カメラの性能が向上し、不審者を発見した際には警察への通報や、自動追跡をおこないます。家庭の防犯では「スマートハウス」が広がり、登録者しか鍵が開けられないようできたり、万が一空き巣などが侵入した際には、家族と警察に通達が行くシステムも開発されてきています。
⑩防災・安全
降水量を365日計測し、河川の氾濫を予測することが可能。職員が監視できないような上流の調査も行えるため、住民への避難指示も安全に伝えられるでしょう。地盤に振動検知を設置すれば、地震や土砂崩れ、雪崩の予測もできるため、地域住民の避難や備えにつながります。
上記のような暮らしの改善を行うためには、複数分野の連携がかかせません。スーパーシティでは、複数分野の問題を解決するために、大胆な規制緩和を行うと表明しています。
■5Gはスーパーシティ実現を担う基盤
5Gは超高速・超低遅延・多数同時接続という通信特徴から、膨大なデータもスムーズに送受信でき、途切れることなく安定した通信が行なえます。
5Gが広がれば、今後はあらゆるものがIoT機器としてネットワークに繋がることで、これまで難しかったサービスが提供できる可能性も。新たな通信規格である5Gは、スーパーシティ実現を担う基盤となっていくでしょう。
データ利活用型スマートシティとは
データ利活用型スマートシティとは、IoTデバイスやセンサーから取得できるビッグデータをデータ連携基盤に集めて、都市の課題解決のために活用する街づくりのこと。データ基盤に集約されたビッグデータは、住民の健康データや、交通量、降水量など多岐にわたります。
データ利活用型スマートシティの事例としては、除雪作業効率化やインバウンド集客に取り組んだ札幌市や、レンタサイクルのGPS設置や水センサーから水害予測に取り組んだ高松市があげられます。自治体によって抱える問題は異なるため、各自治体ごとのデータ利活型スマートシティが登場していくでしょう。
現代都市が抱える課題の解決
日本の抱える問題では、人口減少と少子高齢化が大きく取り上げられますが、さらに地域では、交通手段の減少や、労働力の減少など多くの社会課題が見えてきます。このような社会課題の解決にはICTの活用が欠かせません。これまでも政府はICT技術を活用したテレワーク推進や、センサーを使ったスマート農業などに取り組んできましたが、今後は次世代高速通信5Gの登場によって、加速的にICT技術が発展していくでしょう。
スマートシティ実現における5Gの重要性
これまで通信技術は急激に進化しており、固定電話が主流だった頃から見れば、現代の通信技術の発展は明らか。5Gは第五世代の通信システムとして位置づけられ、最新のICTインフラとして期待が高まっています。今後5G基地局が日本全土に設置され、ICT技術によって地域課題が解決されていけば、豊かなスーパーシティが構築されるでしょう。
まとめ
世界各国でテクノロジーによる街づくりが進み、スマートシティと呼ばれています。しかし、日本では住民目線であらゆる分野のICT化を目指した「まるごと未来都市=スーパーシティ」の構築を目指しています。5Gの普及が進めば、スーパーシティの実現はそう遠くはありません。今後も5Gとスーパーシティ法の動向に注目していきましょう。