5Gのセキュリティリスクと必要な対策

日本でもついに始まった「5G」は、これまで主流だった4Gよりも、高速かつ安定した通信を実現しており、複数の端末を同時に動かせるという特徴があります。しかし良い面ばかり注目される5Gの懸念点についても、把握しておきたいところ。
5Gはあらゆる人や物を繋げてくれる便利な物ですが、もしサイバー攻撃を受けた時に、多数の端末を接続している分、これまで以上に大きな被害をもたらす可能性もあります。本記事では5Gに潜むセキュリティリスクと、対策について解説していきます。
Contents
5G利用におけるセキュリティリスクとは
インターネットに繋がる端末をIoTといいます。5Gの持つ「超高速・超低遅延・多数同時接続」という特ゆるものがIoT化し、ロボットの遠隔操作や、自動運転が出来るようになるでしょう。
しかしIoT機器は、パソコン等に比べて処理能力が低いものも多く、セキュリティ対策が搭載されていない場合もあります。端末自体のセキュリティが低ければ、5Gの特性を活かして、より高速なハッキングや、より大量のウイルスをばらまかれる可能性もあるという点を理解しておかなくてはいけません。
サイバー攻撃
コンピューターへのサイバー攻撃は増加しており、警察庁によれば、2019年のサイバー攻撃の検挙数は、9,519件と過去最多を更新。観測された攻撃の内、約半数近くがIoT機器を狙ったものだったという結果が出ています。
(参考:令和元年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について 警察庁)
実際に2016年には、約60万台のIoT機器がウイルスに感染し、企業サーバーに負荷をかけてサービスを停止させるDDoS攻撃に加担させられていたとしてニュースになりました。このDDoS攻撃は史上最大規模のサーバー攻撃といわれていますが、5Gが普及し、さらに多くの機器がインターネットに接続されればこれまで以上に大きな攻撃と被害が生まれるかもしれません。
5Gのメリットの悪用
5Gによって通信速度は10倍、遅延は1/10、同時接続台数は10倍が実現できますから、自動運転もより完成に近づくでしょう。
しかし、サイバー攻撃を自動車が受けて、乗っ取られてしまえば、勝手にハンドルやアクセルを操作される危険性もあります。万が一サイバー攻撃による事故ともなれば、その企業への影響は計り知れないでしょう。
5Gを活用することで最新技術が次々と発表されていますが、5Gの活用によって新たなリスクも生まれる可能性があることも把握しておきたいですね。
ハッキングリスク
街中やビル・家に設置されている防犯カメラが、インターネットに接続されれば、膨大な映像データをハードディスクで管理する必要はなくなり、管理が楽になります。またAIによる顔認証技術によって、事件があった際に犯人の早期発見に繋がるでしょう。
しかしカメラをハッキングされてしまえば、個人の生活を盗み見されてしまうことも有り得るかもしれません。映像データを分析すれば、個人の行動パターンも分かりますから、犯罪に巻き込まれるという懸念もあるのです。
位置情報の特定がしやすい
スマートフォンや持ち歩くIoT機器をであれば、バックグラウンドから位置情報を操作し、常に端末使用者がどこにいるか特定される可能性もあります。4Gでもこの攻撃はありましたが、5Gの通信技術であれば、今よりも大量のデータを高速で抜き取られてしまうかもしれません。
さらに、偽の警報を表示させ、付近で災害があったと、使用者の不安をあおるような攻撃をされる可能性もあるでしょう。
5Gに必要なセキュリティ対策
業務効率化を意識するあまり、セキュリティ対策は二の次という企業もあるでしょう。セキュリティを上げることで、個人情報漏えいを防いだり、第三者による攻撃を防ぐことが出来ますから、企業のセキュリティを高めることは、長期的に見て業務効率化に繋がるでしょう。
5Gを利用するにあたって、企業単位や個人単位でのセキュリティ意識の向上が求められます。5GやIoT機器の危険性を把握し、セキュリティレベルを上げていきましょう。
以下より、企業と個人に分けたセキュリティ対策についてまとめています。
企業に求められる5Gのセキュリティ対策
企業で使われているIoT機器は、パソコンやWebカメラ、防犯カメラなどが一般的でしょう。しかし今後はARメガネなどの、今までになかったようなデバイスも登場してくる見通しですから、業務効率や機器の費用だけでなく、セキュリティレベルの高いメーカーを選ぶようにしたいところです。
企業でIoT機器を導入する場合には、大量注文を行なうことも多いはず。もし1つの端末からウイルスが検知された場合、そのサーバーを使っているすべての端末に同様のリスクがあることになりますから、導入前の端末購入は慎重にしましょう。
また定期的なパスワード変更も重要です。テレワークで端末を貸し出しており、従業員にパスワードを変更して貰うという対応を取っている企業もあるかもしれません。しかし、従業員全員が定期的なパスワード変更に協力してくれないこともあるでしょう。その場合、自動で定期的なパスワード変更を行ってくれるソフトを導入するなど、変更もれのない対応策を取る必要があります。
個人の利用者に求められる5Gのセキュリティ対策
企業によるセキュリティ対策が万全であっても、個人のセキュリティに対する意識が低くては、意味がありません。とくにテレワークが増え始めた最近では、自宅のWi-Fiを使う機会も増えているでしょう。
ルーターのパスワードが初期設定のままの場合、第三者による侵入を許す確率が高くなってしまいます。定期的なパスワードの変更が手間であっても、初期パスワードの変更はするようにしましょう。
また、メールの添付ファイルにウイルスが仕掛けられており、ファイルを開くだけで、ウイルスに感染する場合もあります。ウイルス対策ソフトを最新に保ち、添付ファイルがウイルスに感染していないかチェックするようにしましょう。
5GのセキュリティにはAiの力が必要
サイバー攻撃の種類は多く、対処してもまた新しいウイルスが生まれるという流れを繰り返しているのが現状です。セキュリティ対策はどうしても後手に回りがちであり、ウイルスの特定に時間がかかっていました。
そこで注目されているのが、AIを使ったセキュリティ対策。Aiにウイルスの種類や攻撃パターンを学習させ、未知のウイルスにも対策できるサービスが開発されています。5Gの時代では、種類も性能も未知なウイルスが登場してくるかもしれません。
しかしウイルスの侵入を未然に防ぐことが出来れば、今よりもセキュリティレベルは向上するでしょうから、AIを活用したセキュリティサービスの動向に注目していきたいですね。
まとめ
5Gの活用によってIoT機器が増える分、セキュリティリスクも高まります。あらゆるものがつながる時代では、1つの端末がウイルスに感染することで、他の端末への影響が出たり、サイバー攻撃の加害者として攻撃に加担する危険性もあるでしょう。
日本では今後スーパーシティ構想として、5GとIoT機器を活用した未来都市を作る動きが高まっています。具体的には、ドローンによる遠隔輸送や、遠隔授業、ペーパーレスな行政処理など、住民の暮らしを支える計画です。まだ5G基地局の数が限定的なため、実現は数年先の予定ですが、私たちも5Gを活用するまでに5Gのセキュリティリスクについて学ぶ必要があるでしょう。