【学校教育×5G】コロナ禍がローカル5Gのニーズつかむ

新型コロナウイルスの影響を受けた教育現場では、対面授業を避けオンライン授業を行なっている学校も多いでしょう。オンラインの授業を円滑に行うには、高速で安定したインターネット通信が欠かせません。次世代高速通信「5G」は設置がまだ進んでいないことからも、各自治体では「ローカル5G」の設置を検討し始めているようです。5Gの登場によってこれまでの授業とは何が変わるのでしょうか。
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遠隔授業実現の熊本に学ぶポイント
緊急事態宣言の発令によって、全国の学校では続々とオンライン授業に切替わってきていますよね。全国の中でもいち早くオンライン授業に移行したのは、熊本県熊本市。政府の休業要請が出される前に、Zoomの活用などコロナ禍の体制作りを進めていた為、休校後すぐ遠隔授業を開始できました。熊本市のオンライン授業の取り組みを詳しく紹介していきます。
コロナで進む学校の意識改革
ICT技術の導入がなかなか進まないとされてきた教育機関。しかし、コロナをきっかけにオンライン授業の重要さを感じた学校も多いでしょう。今教育現場では大きな意識改革が起きているのです。
今後はコロナだけでなく、インフルエンザやノロウイルスによる休校、不登校児のケアなどオンライン授業の活用場面は多くあります。ICTを活用すれば、これまで以上に授業は活性化され、教師の業務量改善に繋がるでしょう。
新しい学びの様式
熊本市で取り組んでいるICTの事例を見てみましょう。いきなり全ての授業をオンラインに切り替えるのは難しいと考えている学校も、オンラインで出席を取るなど、やれることから始めてみるのもいいですね。
①Zoomで出欠確認・健康観察
小学校では必ず出欠確認と健康観察を行ないます。Zoomを活用すれば、自宅にいる生徒の顔や表情を見ながら確認することが可能。家での様子を聞くこともできます。
②Google formsを使ったアンケート
Googleのクラウドサービス「Google forms」を使ってアンケートを作成できます。授業のまとめやアンケートに利用でき、グラフも自動で作れるので評価が一目瞭然。生徒の理解度の把握や、教師の学びにつながります。
③「ロイロノート」を使って連絡帳に
熊本市では、教育支援アプリ「ロイロノート」を利用し生徒とのコミュニケーションに活かしています。ロイロノートはすでに2,000校以上で導入されているアプリ。生徒が1日の感想を送信して先生がコメントを返したり、保護者とのやり取りに使われています。ロイロノートを使用した授業を行なっている学校もあります。
ローカル5Gが非対面・非接触を実現
5Gの基地局の設置は段階的に広まっていますが、全都道府県に届くのはまだ先です。そのため5Gを活用したいけれど、まだ提供エリアでないという地域では「ローカル5G」の設置が急がれています。
ローカル5Gは、docomo・au・softbankなどの大手通信業者が展開するものとは違い、各自治体や施設が主体で設置する限定的な5G。ローカル5Gを設置することで、これまでよりも高速で安定したICT活用ができるでしょう。
例えば、グループワーク中にタイムラグなく生徒同士の意見交換ができたり、体育の授業では教師の動きに合わせて、生徒が身体を動かしたりと5Gを活用することで日本の教育現場は大きく変わっていくでしょう。
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大学は臨時休校中に5G構築
最先端の未来環境の構築を目指している九州工業大学は、QTNetと共同で学内にローカル5Gを設置予定。大学は現在臨時休校中でオンライン授業がメインになっていることから、休校中にローカル5Gの設置を進める考えです。休校明けからは5Gを活用した授業や社会実験が進んでいくでしょう。
機器や電波の整備も進む
教育機関等でローカル5Gの設置を望む声が上がっているものの、商用での活用はまだほとんど行なわれていません。実用化が遅れた背景には、ローカル5Gの基地局に必要な機器の開発が追いついていなかった点に加え、ローカル5Gの電波は障害物に弱く、遠くまで届きにくいという問題点もあります。
しかし、機器開発と電波の改善は次第に進んでおり、商用化実現に向けた環境が整ってきています。ローカル5Gが普及すれば、学校独自のネットワークを構築できるため、セキュリティも高く安心と言えるでしょう。
学校教育におけるローカル5Gの活用場面
文部科学省を中心に「GIGAスクール構想」という計画が推進されているのはご存知でしょうか。GIGAスクール構想とは、1人1台端末と高速大容量通信環境を整備することで、児童生徒・教師の力を最大限引き出すことを目指しています。1人1台端末を持つことで、個別に学習理解度を把握することが可能でしょう。
OECD/PISAによる世界の生徒の学習到達度調査では、日本の読解力が前回の調査よりも点数・順位共に低下しており、国語教育への関心が上昇。
(参考:“OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント”国立教育政策研究所)
ICTを活用した国語授業によって日本の教育レベルを上げられるのではないかと考えられています。
ローカル5Gが活用されれば、生徒の作文にコメントを残し長文作成力を高めたり、VRを使って小説の世界に入り、文章中の言葉の意味や文化的背景を理解することも可能です。日本の教育現場は、ローカル5Gによって大きく変化していくでしょう。
ローカル5Gはリモート授業の円滑化も
超高速・超低遅延・多数同時接続が可能な次世代高速通信5Gを活用して、施設や自治体などで独自にネットワークを構築できるローカル5Gは、リモート授業の円滑化に役立ちます。
大学では1講義に対して100名を超える場合も珍しくないでしょう。5Gであれば大人数の授業でも遅延なくスムーズに授業が行えます。さらに画面共有をして生徒のレポートを直接添削・指導することもできますので、ローカル5Gを活用した授業はさらに増えていき、新たな活用方法が見出されるかもしれませんね。
まとめ
世界で5Gの提供開始が早められたことからも、5Gへの期待が高いことが伝わります。今後はオンライン授業だけでなく、生徒と教師とのコミュニケーションの場や、生徒の学習状況の把握のためにもICTは活用されていくでしょう。さらにペーパーレスになることで教員の負担減少も望めます。子ども・保護者・教師それぞれがメリットを感じるローカル5Gの設置に注目していきましょう。