「5Gに健康被害がある」は嘘?総務省とWHOの見解を紹介

5Gが普及すれば超高速通信・超低遅延・多数同時接続が実現し、暮らしが豊かになるのではないかと期待が高まっています。5Gの商業利用が始まれば、経済が活発化することは間違いないでしょう。

 

しかしその一方で、5Gの健康被害を心配する声があがっているのはご存知でしょうか。5Gの利用を国が規制している場合もあり、5G基地局が展開されている状況に不安を感じる方もいるかもしれません。

 

そこで本記事では、5Gによる健康被害の報告例とともに、日本政府やWHOの5Gに対する見解を解説していきます。

 

日本は5G普及に積極的

2019年3月末に日本でも、次世代通信規格5Gの提供が始まりました。日本政府は積極的な5Gの利用を目指しており、5Gを使った商業利用を視野に入れています。

 

最新の政府の発表によると、2023年度末には5Gが28万局に到達すると発表し、大きなニュースとなりました。当初の同年度の目標は、21万局でしたからかなりのスピードで5G網が広がっていることが分かるでしょう。

(参考:5G基地局、23年度末に28万局 総務省が目標上げ 日本経済新聞)

 

5Gが日本全国で展開されれば、自動車の自動運転や、ロボットの遠隔操作、遠隔医療など、私たちの暮らしが豊かになることは間違いありません。

5G通信で自動運転技術はどこまで進化するのか

5Gによる市場活性化が見込まれる日本ですが、世界に目を向けると5Gの危険性を感じている国もあるようです。

5Gの影響を心配する声

5Gの開発を急ぐ日本ですが、世界では「5Gは人体に悪影響を与える説」があるのは本当です。こちらでは世界で報告されている5Gの健康被害や、ニュースについて紹介します。

 

「発がん性」や「電磁波過敏症」など、私たちの健康をおびやかす危険性があるのではと不安になるかもしれませんが、後述で政府とWHOの見解を発表しますので、最後までしっかりとチェックしましょう。

 

・ムクドリの大量死=デマ

まずは2018年にSNSを中心に広がったニュースを紹介します。

オランダが5Gの実験のため電波を飛ばしたら、近くの公園にいた大量のムクドリが突然死したというニュースです。このニュースは、のちにフェイクとして撤回されましたが、SNSの特性上フェイクニュースが世界中に拡散されてしまい、5G=悪というイメージができてしまいました。

・発汗性に悪影響を及ぼすのでは?

イスラエルのベン・イシャイ氏による論文によれば、5Gの電波が人体の発汗機能に悪影響を及ぼすのではないかと発表しています。

 

内容を要約すると、5Gの発する75~100GHzの周波数が発汗機能に影響を与え、ストレスから汗が出にくくなるのではないかという内容です。(参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29459303/)

 

しかしこの実験で使われた周波数が、日本でそのまま使われている訳ではありません。日本で使われる5G周波数帯は3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯となっていますから、実験の半分以下の周波数なのです。

 

周波数が変われば人体への影響も異なるはずですから、この実験のとおりの影響が出るとは考えにくいでしょう。

 

・発がん性があるのでは?

WHOのがん研究専門組織IARCは、携帯電話用の電波の発がん性リスクを2B(ヒトに対して発がん性があるかも知れない)と位置づけています。また5Gの電波にいたっては2Bよりも高いリスクがあるのではないかと指摘しているのです。

 

この報告を受けて、ベルギー・イタリア・スイス・アメリカの一部では、5G実験の中止もしくは延期に踏み切りました。

(参考:国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価 くらしの中の電波)

 

・電磁過敏症を引き起こすのでは?

そもそも電磁過敏症とは、アレルギー反応のように、電磁波に対して体が過敏に反応し、頭痛やめまいなどの症状を引き起こすことです。5Gの高周波数帯によって、電磁過敏症を引き起こす人が増えるのではないかと懸念されています。

 

実際、強い電磁界においては、気分が悪くなったり、身体が火照ったりすることは認められています。しかし社会で使われている電波の基準は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)や、総務省の電波防護指針等によって、人体に影響の出ないよう基準値が定められているのです。

5Gの電波ももちろん基準値内になっていますから、電磁過敏症を引き起こすと確定するのは時期尚早ではないでしょうか。

(参考:.電波の安全性に関するパンフレット 総務省電波利用ホームページ)

なぜ5Gを不安に感じる人が増えたのか

5Gにまつわる健康被害報告が挙がっているのはどうしてなのでしょうか。それは5Gの周波数帯「ミリ波」の影響が大きいでしょう。

iPhone12で注目!「Sub6」「ミリ波」の違いは?高速通信を支える2つの周波数帯

5Gは4Gよりも高速な最大20Gbpsの通信速度を実現するために、衛星などに使われる高周波数帯を使っています。

 

また電波は、周波数帯が高くなればなるほど、障害物に弱く電波が届きにくいという特徴があります。そのため日本では5Gを全国普及させるのに、4Gのときよりも多くの基地局を設置する予定です。

 

「目には見えない高周波帯の電波が、多くの基地局から出てくる」という状況が、健康不安を加速させたのではないでしょうか。

 

電波の基本知識について知りたいという方は、以下の記事がおすすめです。

電波とは?種類や特徴を分かりやすく解説!

「5Gが人体に与える影響」を総務省が発表

それでは総務省は、5Gが人体に与える影響について、どのように考えているのでしょうか。

 

総務省が作成している「第5世代移動通信システム(5G)の健康への影響について」をもとに確認してみましょう。(参考:第5世代移動通信システム(5G)の健康への影響について 総務省

 

電波に関する影響は、以下の通り要約できます。

 

●電波には熱作用(体温を上昇させる効果)がある

●しかし日常生活において浴びる電波は、熱作用を及ぼすほど強力ではない

●なぜなら日本の電波は電波防護指針によって決められており、基準値以下になるよう安全が考慮されている

●基準値に満たない電波が、健康に悪影響という証拠はみつかっていない

 

このように日本で使われる電波は、法律のもと安全性が確立されていることが分かります。

 

5Gに対するWHOの見解

あわせてWHOが発表している5Gに関する健康への影響も見てみましょう。資料のもと内容を要約していますが、詳しく知りたいという方はぜひ参考資料を読んでみてください。

 

●3.5 GHzの5Gからの露出は、既存の携帯電話基地局からの露出と同じ

●電波と電波が与える健康への悪影響の因果関係はない

●曝露量が国際的なガイドラインを下回っていれば、公衆衛生への影響は予想されない。

(参考:放射線:5Gモバイルネットワークと健康 WHO)

 

WHOが認めた電波の発がん性は「限定的」

先ほどもお伝えしたとおり、WHOのがん研究専門組織IARでは、電波による発がん性を2B(ヒトに対して発がん性があるかも知れない)と認めています。

 

しかし2Bは「人に対する発がん性があると断定する影響が限定的であり、動物実験では発がん性があると断定するには不適切な証拠しかない」という意味です。

限定的な影響とは、以下の状況を指しています。

 

“一日15時間以上(累積通話時間が1,640時間〜2,000時間)通話した場合に、がんの発生率が増加する要因になる”

(引用:携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解(PDF)

 

一日15時間通話するという状況は、かなり限定的です。日本のように電波の安全性が確立されている国では、電波が与える身体への影響を関連付けるのは難しいでしょう。

まとめ

目に見えず触れられない電波に対して、不安に感じることもあるでしょう。とくに5Gは衛星が使う高周波帯の電波ですし、特性上4Gのときよりも基地局を増やす必要がありますから、そう考えるのも当然です。しかし電波による健康被害があるという明確な証拠はまだ出てきていません。また日本で使われている電波は、法律のもと健康への安全性が確立されていますから、安心して使えるでしょう。